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なりすました姦辱
第2章 制裁されたシングルマザー
 牝奴隷──ただの現実逃避なのはわかっているが、無視をすれば『奴隷宣言』はなかったことになるのではないか。これまで男たちにねだれば叶えられてきたように、モテない、気色悪い中年の、単なる思い込みにできるのではないか、いや、そうなってほしい……返信をせず捨て置いて、引き続き、汐里はベッドの中で懊悩した。

 夜が明け、自己を保つために、ひとつも休めていない脳と肉体を叱咤して、無理やり出社してきたというのに──

「うっ……」

 廊下に鳴らす踵音のリズムを乱しそうになった。

 土橋の存在を意識しただけだというのに、いつもはすすんで晒していたウエストから脚へと続くラインを、今日は膝丈の厚手のフレアスカートで隠しているその奥地で、肉洞の壁が勝手にうねついた。そしてひとたび空虚を惜しんでしまっては、あの大きくて硬い肉塊が反復して襞を弾き、天井を押し上げ、最奥のたもとを小突いてきた触感が、生々しく思い出された。

 ビッチ、それからドスケベ、変態──最中散々に投げかけられた蔑称は、女ならば決して受け入れてはならないのに、それその通りの劣情に駆られてしまっている。こんな状態で土橋に相対したくはないが、執務中である、モタモタもしていられなかった。異変を同乗者に気づかれないよう平静を装い、エレベーターで28階へと降りていく。

 どこにいるのかを探すのだと思っていたら、開いたドアの先にいきなり土橋がいた。咄嗟に周囲に視線を巡らせるが、フロアに人はいるらしいものの、エレベーターホールや廊下を歩いている者はいない。

「遅いぞ。俺は休職中の身なんだ。出社してるとこを誰かに見られたら困るんだ」
「……かっ、会議だったの。そんな、すぐには来れない」

 コクンと唾を呑み込んでから答えたが、どうしても、喉が絡んだ。
 土橋はフン、と鼻を鳴らし、

「おいおい、奴隷が歯向かうのか?」

 と、声量を憚らず言ってくる。

「まっ……、待って」
 汐里は携えていたタブレットを使い、「4番、4番会議室、予約取ったから、そこで話そう? ここでは変なこと言わないで」

 するとまた土橋は鼻息をついたが、汐里が廊下を進み始めると、後ろを追いてきてくれた。
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