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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL
 土橋のスマホから自分の番号を鳴らしてみたが同じで、そのまま前の道に出て自分の部屋を見上げてみたが、部屋の中で鳴っているのかどうかは、さすがにわからなかった。

 出かけているだろうか。自分がそうであったように、土橋だって腹が減る。冷蔵庫にはそれなりの食料が貯められていたと思うが、もしかしたら、買い物に出かけているのかもしれない。

 待ってみることにした。

 だが、ドラマなどでは張り込み先の前には都合よく喫茶店があったりするものだが、現実はそううまくはいかず、マンションの出入りを見渡すことができる少し離れた場所にある電柱の陰に立つことにした。かつ、ドラマなどではシーンが切り変わり、さっそく張り込み先には動きがあるものだが、当たり前だが目の前で繰り広げられるのはごく普通の日常であり、平日とあっては住人は皆学校に行っているのだから、訪れるのは宅配便の配達員くらいだった。

 愛梨からのフォローにも気を回し、時おりスマホの画面を確認しつついると、一時間を超えると土橋の体が根を上げた。あの性豪ぶりはどうした、と言いたくなるが、エロが絡まない限りこの中年の筋肉に耐久力はないらしく、塀に身を預けて立っているだけでも足の負担が耐え難くなってきた。

 目の前を、小型犬を連れた主婦らしき女が、電柱の臭いを嗅ぎに行こうとする愛犬を引き留めながら通った。通り過ぎても、訝しげにこちらを窺ってくる。

 確かに土橋のような中年男が、スマホ片手に物陰からマンションをじっと見つめていたら、底気味悪い画である。土橋もまた行動を起こし、街に出て自分の体を探しているのだろうか……ゴミ部屋にはやって来ずに? けれども部屋の灯りの有無で不在を確認できるし、自宅へ来るのなら夜にすべきだったかもしれない──いや、夜道で土橋がマンションを見上げて佇んでいたら、それこそ通報待った無しだ。

 主婦が行った先に目を遣ると、自転車で警邏中の警官が向こうからやってきた。

 呼び止めている。
 何度かこちらを指さして、何かを話している。

 昼も夜も関係なかった。
 とにかくマズい。職務質問をされたときの、もっともらしい嘘を考えていない。

 保彦は駆け足にならないように注意して、かつ、遠目だからわからないだろうと、してもいない腕時計を見て、更には鳴ってもいないスマホを耳に当てながら場を離れた。
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