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なりすました姦辱
第4章 隔絶された恋人

目を向けるなり、遣り場に困った。
ランニング中だろう三人の女の子たちなのだが、皆、肩も脚もウエストも丸出しにしたウェアを着ていた。三人で顔を寄せ合い、真ん中の、一人だけ肌の色が濃い子が高くに掲げたスマホで撮影を終えたところのようだ。さっそく画面を覗き込み、長いネイルを素早く動かしている。運動中の様子すら、世界に共有して反応を見たいらしい。
「ちょ待って、ちゃんと、あんたらの顔は……うっし隠れた。てかアタシだけくっろ! ヤバないコレ?」
何が可笑しいのかわからないが、自分たちで撮った自分たちの写真であるにもかからず、真ん中の子が噴き出し、釣られて二人も笑い声を上げている。
「てかあんたさ、他のモデルのインスタとかって、ジムとかでやってんのをアップしてたりすんじゃん。こんなビンボーくさい河原でいいん?」
「んー、それだと目立たんっしょ。アタシみたいなギャルいタイプがさ、審査に向けてガンバってまーす、ビンボーだけど夢に向かってヒタムキ……だっけ? それがウケんじゃん」
「んなセコい作戦、通用すっかよ」
一同、屈託ないが品もない笑い声で賑やかしい。周囲を気にせず喧しく騒げる年頃なのだ。ただしランニングじたいはSNS用のうわべだけではないらしく、まだ三人とも笑いが収まっていなかったが、後ろに結んだ明るい髪を左右へ振って走っていってしまった。
川沿いの道はどこまでも伸び、陽炎がその先を揺らしていた。遠くの景色は蜃気楼のように暈やかされ、照りつけられた道路から立ち昇る熱気が、近くの視界までをも歪ませにかかってくる。アスファルトの亀裂は蜘蛛の巣のように広がり、その隙間から這い出た草が強すぎる太陽で項垂れていた。風が止み、川べりに植わる木々の葉は微動だにしない。離れた先の送電線の鉄塔が、咽せ返る歪みの中で骸のように聳えていた。
行く先に、ひとつ、白い影が現れた。
近づいていくにつれ、明瞭になっていく。白に見えていたが、淡いブルーの花柄が散りばめられた、ふくらはぎ丈の上品なワンピースだった。歩くたびにふわり、ふわりと揺れている。肩に置いた日傘から覗く、七分袖の袖口にあしらわれたさりげないフリルが優雅さを醸し、腰の高い位置の同色のリボンはほっそりとしたシルエットを描き出していた。
彼女を、呼んではいけない──
ランニング中だろう三人の女の子たちなのだが、皆、肩も脚もウエストも丸出しにしたウェアを着ていた。三人で顔を寄せ合い、真ん中の、一人だけ肌の色が濃い子が高くに掲げたスマホで撮影を終えたところのようだ。さっそく画面を覗き込み、長いネイルを素早く動かしている。運動中の様子すら、世界に共有して反応を見たいらしい。
「ちょ待って、ちゃんと、あんたらの顔は……うっし隠れた。てかアタシだけくっろ! ヤバないコレ?」
何が可笑しいのかわからないが、自分たちで撮った自分たちの写真であるにもかからず、真ん中の子が噴き出し、釣られて二人も笑い声を上げている。
「てかあんたさ、他のモデルのインスタとかって、ジムとかでやってんのをアップしてたりすんじゃん。こんなビンボーくさい河原でいいん?」
「んー、それだと目立たんっしょ。アタシみたいなギャルいタイプがさ、審査に向けてガンバってまーす、ビンボーだけど夢に向かってヒタムキ……だっけ? それがウケんじゃん」
「んなセコい作戦、通用すっかよ」
一同、屈託ないが品もない笑い声で賑やかしい。周囲を気にせず喧しく騒げる年頃なのだ。ただしランニングじたいはSNS用のうわべだけではないらしく、まだ三人とも笑いが収まっていなかったが、後ろに結んだ明るい髪を左右へ振って走っていってしまった。
川沿いの道はどこまでも伸び、陽炎がその先を揺らしていた。遠くの景色は蜃気楼のように暈やかされ、照りつけられた道路から立ち昇る熱気が、近くの視界までをも歪ませにかかってくる。アスファルトの亀裂は蜘蛛の巣のように広がり、その隙間から這い出た草が強すぎる太陽で項垂れていた。風が止み、川べりに植わる木々の葉は微動だにしない。離れた先の送電線の鉄塔が、咽せ返る歪みの中で骸のように聳えていた。
行く先に、ひとつ、白い影が現れた。
近づいていくにつれ、明瞭になっていく。白に見えていたが、淡いブルーの花柄が散りばめられた、ふくらはぎ丈の上品なワンピースだった。歩くたびにふわり、ふわりと揺れている。肩に置いた日傘から覗く、七分袖の袖口にあしらわれたさりげないフリルが優雅さを醸し、腰の高い位置の同色のリボンはほっそりとしたシルエットを描き出していた。
彼女を、呼んではいけない──

