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なりすました姦辱
第4章 隔絶された恋人
「……愛梨」

 発せられた男の声に、日傘が翻った。
 そして……、危惧したとおり、可憐な顔が恐怖に染まっていく。

 逃げろ──

 川岸の人々の日常を前に、すっかり装を潜めていたはずの肉棒が持ち上がる。
 脈動するたびに、餓つえる涎を、もはや尖端から漏らし始めている。

「愛梨っ」

 あれだけ重苦しかった足が、一歩、また一歩と前に出た。
 だんだんと、踏み出す間隔が早く、歩幅も大きくなっていく。

 頼む、逃げてくれ──

 愛梨は日傘を離すと、背を向けて駆け出した。
 だが、体の中で亀頭が一番先頭を走っているかのごとく、その背が着実に近づいてくる。

 ……いくら思案し、どこに足を運んでも、一向に自分の魂の器は見つからなかった。

 なのに、脅迫されていた女と遭遇し、出来心で姦せば侮辱してくる女と遭遇し、仕返しとして姦せば濡れ衣を着せてくる女と遭遇し、懲らしめとして姦せば……いま、逃げ惑っている恋人へと繋がった。

 その恋人の先には、おそらく、探し求めていた器が居るはずなのだ。今までで最も漲っていると言っていい肉棒からも、疑いようがない。サブクエストなんかではなかったのだ。

 走りながら、手がスラックスの前を下ろし、狂暴化した肉鉾を外へと出した。

 愛梨が道路から雑草生い茂る斜面へと方向を変える。その先には小さな公園があり、子供たちを遊ばせている人の影があったからだ。

「……たすけてぇっ!!」

 子供たちを遊ばせていた母親たちが、愛梨の悲痛な声へと顔を向け、一斉に絶叫した。
 しかし彼女らは、勃起を露出した男に追われる愛梨よりも、我が子を逃がすことを優先してしまった。

 少し遠くのグラウンドで少年野球をしている人々が、悲鳴を聞いてこちらに気づいた。
 自転車道を杖をついてやって来ていた老人も、ただならぬ様子に大声を出す。

 愛梨が、砂場で転んだ。
 小柄な体へと覆いかぶさる。
 
「愛梨っ、俺、だよ……俺なんだ」
「いやっ……わ、私っ、あなたのことなんか、知りませんっ!」

 辛うじて訴えたが、手はどんどんとワンピースの裾を捲り上げていた。暴れた拍子に、白い脚肌と下着が、強い日射しに照らされる。 

 ちがう俺じゃない。でも、俺なんだ。

 グラウンドから、コーチと思しき男が駆け出すのが見えた。
 そうだ早く来い。
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