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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL
 長く交わされている会話を流し読みしていくと、土橋が、『あの動画がどうなってもいいの?』なる旨の一言を発すると、リリは軽蔑の言葉を返しつつも、そこまで嫌うなら既読無視をしたらいいのに、必ず返信していることに気づいた。

 どうやら土橋は、リリを脅迫しているらしかった。
 動画とは、そのネタなのだろう。

『あんたなんかと付き合えるわけない 顔見てモノ言って』
『なぜ?』

 そりゃあ、お前が、あ、今は俺か、ブサキモのオッサンだからだろ。
 噴き出してから画面をスクロールさせていく。

 リリは、土橋の彼女などではなかった。
 キモい中年に脅迫され、言い寄られてる不幸な女だ。

(どんなにモテないオバサンでも、男を選ぶ権利はあるよなぁ)

 若干リリを気の毒に思いながら先を進めると、画像が添付されている会話に行き着いた。

『今どんなカッコしてるの? 写真送ってよ』

 土橋の要求に、『バカ』『気持ち悪すぎる』、そしてまたしても『消え失せて』とフキダシが並んだが、再び『動画を』云々が伝えられると、観念して送られたものらしかった。

(えっ?)

 ピザを咀嚼していた顎が止まった。

 首から上は切れているが、ゆったりとしたロングシャツ姿でも、かなりのスタイルの良さが見て取れた。若い。勝手に想像していた、モテない中年のオバサンにはとても見えない。

 それだけで土橋は満足せず、谷間を見せろと要求し、またいくつかの拒絶とのやり取りがあったあと、前屈みになった襟の暗闇に、優美な双つの膨らみを収めた写真が届いていた。画像の上部に口元が見切れている。アップになった厚く扇情的な唇と、殆どの者にとって理想的と感じさせよう顎のラインは、かなり優秀な顔貌を想像させた。

 そんな画像を要求していながら、土橋は引き続き、リリを口説いていた。

 必死になるだけの相手だとはいえ、会話によるとどうやら彼氏がいるらしいリリが、土橋なんぞに乗り換えるわけはなかった。けれども脅迫をしていることを忘れているかのように、フキダシで綴られる口説き文句は情熱的で、中年男の憐れな渇求が炙り出ていた。当然、リリは画像送信には応じても、交際の申し込みには取り合わず、果てには『死んでもありえない』とまで告げている。
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