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なりすました姦辱
第1章 脅迫されたOL
 そんなわけはなかった。土橋が来たのならば、当然眠りこけている体を起こそうとするだろう。中身は誰なんだと怖じ気づいたにしても、目覚めるまで待つくらいはするだろう。誰も、居ないということは、誰も、来なかったのだ。いましがた見たスマホにも、上野での発信に対する折返しはなかった。

 保彦は溜息をついた。

 もうすぐ夜になろうとしていた。自分の肉体を制動している土橋は、いったいどこで何をやっているのだろう。

 勃起が治まり始める。いっぱいにまで膨らんでいた時の肉棒には、ぐつぐつと煮えるような焦燥が渦巻いていた。煙草を吸った時の肺の痛みと同じく、肉体的な感覚はどうやら土橋のままらしいが、自分だって愛梨の淫らな姿には興奮するものの、ズボンの中が気色悪くなるほどの我慢汁は漏らさない。ちょっとヌメリっぷりが尋常じゃないぞ、と、スラックスの腰を解いて中を確認しようとして、

「う」

 胃が縮むような感覚とともに、腹が鳴った。

 勃起ぶりに違いはあれど、空腹感ついては自分と土橋で同じのようだった。

 オッサンの股間なんか見てもしかたがないので、スライダーを手放してスマホを取り、近くの店を検索した。財布の中のクレジットカードでピザとドリンクを注文する。こんな部屋で食うのは嫌だが、外へ出て行っている間に土橋が戻ってきたら困る。それにしても、勝手にカードを使ってしまった。本人確認をした本人が本人でなくても不正使用になるのかな、と頭に浮かんだ矢先、スマホが震えた。

 通話ではなく、通知がポップアップしていた。

『今日やっぱ無理』

 メッセージアプリを開く。
 アカウント名は『リリ』。

 誰だ……という詮索に意味がないことは、小田との電話で知れていた。ならば、この人物から何か情報を引き出せないか、探ってみるべきだった。

 反射的に、『なぜ?』と返そうとして思い留まる。送り主に理由を訊いたところで、自分には何も判断できないし、たとえ正当そうな理由であっても、『無理』を了承してしまっては、事態の進展に寄与するとは思えない。

 短い間でも熟考した末に、

『そう言わずに頼むよ』

 と打って返してみた。
 既読表示となる。

『残業 だから今日会えない』
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