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心の中のガラスは砕けて散った
第9章 8月
化粧を終え 紺色のスーツを纏い
綾乃は リビングで外の気配を窺う
時間は9時を過ぎ 壁に掛かる時計の針は
1秒 1秒 時を刻んで行く 時折時計を眺め
外に聞こえるエンジンの音に立ち上がり
また ソファーに座り直していた

外から軽いクラクションの音が
綾乃はテーブルの上のバックを抱え
足早に玄関を出て、助手席のドアを開け
頭から足元まで一度に、血が下がった

頭に巻かれた白い包帯 顔にも大きなガーゼが
テープで止められ ハンドルを持つ右腕はギブスが
巻かれていた 外の風景が走り去る中
和彦が小さな声で

「 今月末で 引っ越します・・・ 」

綾乃は 小さく頷いて 開きかけた口を閉じた
頭の包帯、顔の傷 腕のギブス 聞きたい事は
沢山有ったが 和彦の姿が昨日のその後を
無言で教えて来る 綾乃は此れから訪れる
社長宅、そこで・・・・不安が増して来た

「 お仕事は・・? 」
和彦は前を向いたままで

「 東京の友人に 以前から誘われてたので
  頼る事に・・・・ 」
綾乃は 意を決して 和彦に尋ねた
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