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天狐あやかし秘譚
第72章 侵掠如火(しんりゃくじょか)

☆☆☆
今度こそ、殺った!
カダマシはそう、確信していた。
あの距離、あのタイミング、あの状況。しかも、女を背負っている身で、俺の全力の『揺光』を避けられるわけがない。
そう思っていた。
それが証拠に、ダリと女が『揺光』の生み出した超高密度の熱波の光に溶けていくところを、しかと見届けたのだ。
ただ・・・
「ヤベぇ」
そうひとりごちした。女は攫って連れてこいと言われていたんだった。もしかしたら後で叱責のひとつも食らうかも知れない。ただ、まあ、どうせ敵方だ。殺しちまえば問題はないだろう。そうとも思っていた。
それにしても、さっきはマジでムカついた。
思い出すだけで腸が煮える。
そう、先の交戦にあたってダリは、自らの分身を作り、その中に実体がいると思わせて、カダマシの足止めをしたのだ。幻だけを残し、ダリ自身はさっさと綾音を救出に向かっていたのである。
カダマシが騙されたのを知ったのは、ダリが雷を落とした音を聞いた時だった。その振動によってただ事ではないとわかり、そこでようやく自分が一杯食わされたことを悟ったのである。
騙されたと知ったカダマシは、すぐさま音源のもとにすっ飛んでいった。綾音を抱えただりを発見すると、猛烈な勢いで何発も拳をお見舞いしたのである。しかし、その連撃は悉くダリの異常な素早さで回避されることになった。
これだけでも小癪だというのに、更にダメ押しがあった。
ダリが鼻で笑って言ったのだ。
『狐に誑かされたのは初めてか』と。
この瞬間、カダマシの怒りは頂点に達した。
そして、その怒りのまま、最高出力で『揺光』を放つ。
先程のよりも速く、範囲の広い攻撃だ。逃げられるわけがない、そう考えていた。
やっとのことで、フラッシュのような光の余韻が闇夜に溶け、周囲の煙が風に流れた。そこには地面に空いた巨大な穴があるのみで、彼らの姿は、消し炭すら残っていない。
「やりすぎちまったか?」
冷静になるとちょっと惜しい気もした。もう少しいたぶってからにすれば良かったと後悔する。
あっけねえなあ。
神に近いというからどんくらいかと思えば・・・
今度こそ、殺った!
カダマシはそう、確信していた。
あの距離、あのタイミング、あの状況。しかも、女を背負っている身で、俺の全力の『揺光』を避けられるわけがない。
そう思っていた。
それが証拠に、ダリと女が『揺光』の生み出した超高密度の熱波の光に溶けていくところを、しかと見届けたのだ。
ただ・・・
「ヤベぇ」
そうひとりごちした。女は攫って連れてこいと言われていたんだった。もしかしたら後で叱責のひとつも食らうかも知れない。ただ、まあ、どうせ敵方だ。殺しちまえば問題はないだろう。そうとも思っていた。
それにしても、さっきはマジでムカついた。
思い出すだけで腸が煮える。
そう、先の交戦にあたってダリは、自らの分身を作り、その中に実体がいると思わせて、カダマシの足止めをしたのだ。幻だけを残し、ダリ自身はさっさと綾音を救出に向かっていたのである。
カダマシが騙されたのを知ったのは、ダリが雷を落とした音を聞いた時だった。その振動によってただ事ではないとわかり、そこでようやく自分が一杯食わされたことを悟ったのである。
騙されたと知ったカダマシは、すぐさま音源のもとにすっ飛んでいった。綾音を抱えただりを発見すると、猛烈な勢いで何発も拳をお見舞いしたのである。しかし、その連撃は悉くダリの異常な素早さで回避されることになった。
これだけでも小癪だというのに、更にダメ押しがあった。
ダリが鼻で笑って言ったのだ。
『狐に誑かされたのは初めてか』と。
この瞬間、カダマシの怒りは頂点に達した。
そして、その怒りのまま、最高出力で『揺光』を放つ。
先程のよりも速く、範囲の広い攻撃だ。逃げられるわけがない、そう考えていた。
やっとのことで、フラッシュのような光の余韻が闇夜に溶け、周囲の煙が風に流れた。そこには地面に空いた巨大な穴があるのみで、彼らの姿は、消し炭すら残っていない。
「やりすぎちまったか?」
冷静になるとちょっと惜しい気もした。もう少しいたぶってからにすれば良かったと後悔する。
あっけねえなあ。
神に近いというからどんくらいかと思えば・・・

