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天狐あやかし秘譚
第78章 怪力乱神(かいりきらんしん)

口が暗い洞のように真っ黒に開く。それは狂気の三日月のように歪み、ニタあっとした笑顔になった。この上なく嫌らしい狂気の笑みだった。

カダマシは極限まで目を見開いた。
信じていたお館様の言葉が、彼の心を最後の一片まで壊しにかかる。

そして、ついに、目の前のお館様は、彼の顔に自らの歪んだ笑みを近づけて、囁くようにこう言った。

『お前は、最底辺のクソだよ・・・京本・・・雄一・・・』

その時、プツリ、とカダマシの中で何かが切れた。
彼の口からは慟哭とも咆哮ともつかない奇妙な叫びがあがる。

「何事・・・?」

戦意を喪失し、身体がしぼみはじめたカダマシを見つめていたダリが、その突然の変化に表情を曇らせる。カダマシの身体がぼんやりと赤く光ったかと思うと、その身が数センチ大地から浮かび上がった。

ーなにか、するつもりか?!

突然カダマシの内部に膨らんだ爆発的な力に気付いたダリが槍に力を込める。

ー抑え込まねば・・・

ダリの槍もまたブウンと震え、発光する。込められた力ごと、横たわったまま異常な力を放ち始めたカダマシに打ち下ろす。

「タケ・・・ミカズチ・・・」

そう、カダマシの唇が動いた。
瞬間、カダマシを中心に膨大な力が爆発した。

それは己の身体が崩壊するほどの禁忌の力

決して使ってはいけない第4段階のそれは
名を『タケミカヅチ』といった。
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