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天狐あやかし秘譚
第71章 其疾如風(きしつじょふう)
☆☆☆
句芒廟(こうぼうびょう)は、土門家に伝わる儀式を行うための堂である。広さは六畳ほど。形態は上から見ると五角形をしており、屋内にあるにも関わらず瓦葺きの屋根が設えてある。各頂点に当たる部分には赤色の柱が据えられており、内部には同じく五角形の高座があった。高座の奥には木気を司り、土門一族の氏族神である句芒が祀られた祭壇があった。

廟に入ってよいのは土門一族のみ。ここで行われる祭祀を受け継ぐのも、一族のみとされている。土門が持つ、強力な占師としての力は、彼女自身の才もあるが、この廟に込められた先祖代々の霊力も大きく寄与していた。

占い時に着用する正装である白拍子姿に身を包んだ土門が、祭壇の前に跪き、目の前の文机ほどの机の上に、八角形の形状をした木の板のようなものを置いた。

この板にはいわゆる星宿と呼ばれる中国で用いられている星座の配置及び陰陽五行と方位に割り当てられている卦が記されており、式占盤と言われている。多くの陰陽師が自身独自の式占盤を占術に用いていた。

一般に式占盤は、中央から三つの部分に分かれており、それぞれ天、地、人を意味している。そして、占う際は、時間、場所、占いたい事柄などをもとにして複雑な法則を考慮しつつ、これらの部分を回転させ、結果を計算するのだ。その原理は、天における運行を天帝の計略として読み取り、地と人にどのような影響を及ぼすのか、それを導き出すことにある。式占盤占いの本質は、天命を聞き取ることにあるのだ。

つまり、式占盤の役割は、占いたいデータを入力するとそこから天意の影響を弾き出す、いわばコンピューターのようなものであると言える。そういう意味では、この占術自体は、どこでやっても同じ結果になるはずであり、わざわざ廟に入ってやる必要ないものなのだ。

しかし、土門家に伝わる式占盤占術は、これ以上のことをやってのける。すなわち、組み込む変数として天にある星の運行という決められた運命だけではなく、地の動きである地脈、そして人と人の関係性である縁脈の流れを取り込むことで、その精度を飛躍的に高めているのだ。

この際、地脈、縁脈を読み取るための装置・・・それがこの句芒廟なのである。
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