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天狐あやかし秘譚
第70章 反転攻勢(はんてんこうせい)
☆☆☆
「クチナワのお兄ちゃん!お風呂空いたよ〜」
「ああ・・はいはい・・・」

お風呂上がりで頬をピンクに染めた麻衣が、タオルを肩にかけて声をかけてきた。風呂に入っているうちに攫ってきた女の様子を見に行こうとしていたのだが、やれやれ疲れたと、ぼけっとテレビを見て、グズグズしているうちにあっという間に麻衣が出てきてしまったのだ。
そして、次は、クチナワに風呂に入れ、というのだ。
このあたりは施設で暮らしていたクセ、みたいなもののようだ。麻衣には悪気はない。断ってへそを曲げられても困る。カダマシからはまだ連絡はないが、きっと明日には「死返玉」を持ち帰るに違いない。そうしたら、すぐにこの麻衣を使ってやらなければならないことがある。

しょうがないなあ・・・
ったく子供はめんどくせえな。

ぶちぶち言いながら、クチナワは風呂に向かうことにした。

「はい!洗面器はそっちにあるからね!シャンプーは右、リンスは左よ?」

へいへい・・・

どうも、このジャリは俺のこと後輩だと思ってるみたいだ。まったく・・・
この分じゃ、風呂の後は寝かしつけろとか言ってきやしねえかね。
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