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天狐あやかし秘譚
第70章 反転攻勢(はんてんこうせい)
ーその奴隷になれるのなんて、こんな幸せな・・・

奴隷の宣言・・・しなくっちゃ・・・

ー全部貴方様のものになれる幸福感・・・

「わ・・・私・・・浦原綾音は・・・」

ー奴隷の宣言をするって思うだけで、アソコからいやらしいお汁が出てるぅ・・・

「緋紅様・・・御主人様の・・・」

ーあなたに隷属することを想像するだけでイッてしまう・・・

「性奴隷として・・・」

ー緋紅様が私のトロトロに蕩けた情けない奴隷のお顔を見て、満足そうに笑っていらっしゃる・・・。もっと、見てぇ・・・

「全ての人権を放棄して・・・」

興奮のあまりよだれが垂れてくる。
ーこの悦び、隷属の悦楽・・・これを教えてくれたのは・・・貴方様・・・

「どんなに淫らなことでも受け入れることを・・・」

ーあと一言・・・

その瞬間、再び左胸が激しく疼き出し、それはまるで胸を抉るような痛みに変わっていく。
な・・・何これ!?

「痛いっ!!!」

それは病気のような本当の『痛み』ではなかった。何か切ないような苦しいような、そんな『痛み』なのだが、それはあまりに強く、私は胸をかきむしるように胸を押さえ、うずくまる。そして、それでも収まらず、ベッドの上を転げ回っていた。

「い・・・痛いっ!!痛い!」

タスケテ!・・・苦しい!
何?何なの?!
誰か!
誰か!

こんな時、助けてくれる人。
誰?そんな人・・・いない。
ずっとずっとひとりで耐えてきた私に、そんな人なんて・・・

そう思ったとき、頭の中にふっと不思議な光景がよぎる。
昔の貴族の人が着ていたような・・・狩衣?直衣?

あっちを向いている。背中に届くほどの漆黒の美しい髪。
頭上には・・・頭上には・・・

耳が・・・あれは、狐の・・・狐の耳?

その姿を見ていると、胸が温かくなってくる。大切にされた記憶。包まれるような安らぎ。
絶対に、絶対に助けに来てくれる・・・そんな、安心感。

私が、私が求めてやまなかった温もり。

抉られるような胸の痛みに苦しむ中、ビジョンの中のそれが、ゆっくりと振り返る。
その顔・・・

そして、その人は手を伸ばして、あんなにも必死な顔で、私を守るために・・・私のことを心配して・・・。

あなたは・・・
あなたは・・・

「だ・・・ダリ・・・っ!」

その名を呼んだ瞬間、どろりと周囲の景色が闇に溶け落ちていった。
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