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天狐あやかし秘譚
第68章 多情多恨(たじょうたこん)

☆☆☆
天狐ダリが、曲がりくねる暗い洞窟を滑るように駆け上っていく。その背後から、狐火に囲まれた京本が必死についていっていた。
行きと同じく、容赦なく進むダリに、『おい!待てよ』だの『ちょっと、休ませて』などと弱音を吐きながらも、ダリの脚力についていっているあたり、京本自身もなかなか体力がある方なのかもしれない。
上り坂にも関わらず、行きとほぼ同じくらいの時間で外に出ることができた。外に出た瞬間ダリが、洞窟の方に手をかざすと、見えない衝撃波がそこから放たれる。
「おわっ!」
間一髪、衝撃波を横跳びにして躱した京本の隣で、ちょうど今出てきたばかりの洞窟が、ガラガラと音を立てて崩れていく様子が見て取れた。後少し避けるのが遅ければ、京本はもろともに生き埋めになっていたことだっただろう。
「っぶねえな!!殺す気か!」
京本は立ち上がると、パンツについた砂を手で払う。周囲の狐火が健在なので、なんとかあたりの様子はぼんやりと分かるが、空はまだまだ暗い。時計がないのでよくわからないが、深夜帯であることは間違いないだろう。
「ったく、一言、言えよな・・・。要は、入口塞いでバケモン出てこれねえようにするって寸法だろ?・・・だったらもういいよな?早くよこせよ、そのなんとかっていう玉をよ」
ぐいっと京本がダリの方に手を伸ばす。
「これのことか?」
彼が懐から取り出したのは、先程堂から持ち出した勾玉だった。その表面は緑色に淡く光り、黄色の文様がウネウネと不規則に蠢いている。不思議な色彩の宝玉だった。
「お・・・おう!それだ、それ!」
「主は、なぜ、これを欲しがる?」
「そりゃ、おめえ、それを持ってけば金くれるって言うからよ」
京本の目は欲の光にまみれていた。手を突き出したままジリジリとダリに近寄っていく。もう少しでその玉に手が届くというとき、パシン、とダリが宝玉を拳の中に握り込んだ。
「交換だ」
天狐ダリが、曲がりくねる暗い洞窟を滑るように駆け上っていく。その背後から、狐火に囲まれた京本が必死についていっていた。
行きと同じく、容赦なく進むダリに、『おい!待てよ』だの『ちょっと、休ませて』などと弱音を吐きながらも、ダリの脚力についていっているあたり、京本自身もなかなか体力がある方なのかもしれない。
上り坂にも関わらず、行きとほぼ同じくらいの時間で外に出ることができた。外に出た瞬間ダリが、洞窟の方に手をかざすと、見えない衝撃波がそこから放たれる。
「おわっ!」
間一髪、衝撃波を横跳びにして躱した京本の隣で、ちょうど今出てきたばかりの洞窟が、ガラガラと音を立てて崩れていく様子が見て取れた。後少し避けるのが遅ければ、京本はもろともに生き埋めになっていたことだっただろう。
「っぶねえな!!殺す気か!」
京本は立ち上がると、パンツについた砂を手で払う。周囲の狐火が健在なので、なんとかあたりの様子はぼんやりと分かるが、空はまだまだ暗い。時計がないのでよくわからないが、深夜帯であることは間違いないだろう。
「ったく、一言、言えよな・・・。要は、入口塞いでバケモン出てこれねえようにするって寸法だろ?・・・だったらもういいよな?早くよこせよ、そのなんとかっていう玉をよ」
ぐいっと京本がダリの方に手を伸ばす。
「これのことか?」
彼が懐から取り出したのは、先程堂から持ち出した勾玉だった。その表面は緑色に淡く光り、黄色の文様がウネウネと不規則に蠢いている。不思議な色彩の宝玉だった。
「お・・・おう!それだ、それ!」
「主は、なぜ、これを欲しがる?」
「そりゃ、おめえ、それを持ってけば金くれるって言うからよ」
京本の目は欲の光にまみれていた。手を突き出したままジリジリとダリに近寄っていく。もう少しでその玉に手が届くというとき、パシン、とダリが宝玉を拳の中に握り込んだ。
「交換だ」

