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天狐あやかし秘譚
第68章 多情多恨(たじょうたこん)
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【多情多恨】感じやすい気持ちをもっているために、恨みや悔い、悲しみを感じることも多いこと。
鈍感じゃない分、恨みもハンパねっす!みたいな。
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あの文化祭の日から、僕の人生が狂ってしまった。あの日から、沙也加とうまくいなかくなった。僕と話をしていても、目を伏せたり、視線を泳がせることが多くなる。

もちろん、あの日のことは何度も謝った。沙也加も口では「大丈夫だよ」と言っていたけれども、その態度の違いは如実であり、僕は彼女の心が離れていくのを繋ぎ止めることができない自分を歯がゆく感じた。

数カ月後、決定的な場面を目撃する。
この日は委員会の仕事があり、遅くなった。それでも急いで雑文同好会の部室を訪れたのだが、そこに沙也加はいなかった。そのうち来るかもしれないと思っていたのだが、一向に現れる気配がなかった。

嫌な、予感がした。

いや、実際は、この前から気づいていたのだけど、心の中の箱に押し込めて、見ないふりをしていたのだ。
しかし、この日、沙也加の不在という事態に直面して、僕はとうとう、その禁断の箱を開いてしまうことになる。

教室に戻ってしまったのだ。

「このまま・・・と、付き合っていていいかわからなくなっちゃって」
「うん・・・そうなんだ・・・」

教室の扉の前に立ったとき、中からボソボソと男女の声が聞こえた。女性の方が沙也加のものだということはすぐ分かった。

「やっぱり頼りないっていうか・・・私のこと、ちゃんと好きなのかなっていうのも・・・」
「・・・うん・・・そう・・・」

足が、凍りついたように動かなくなっていた。

付き合っていていいのか、わからない
私のこと好きなのかな?
そして・・・
頼りない

教室の扉を開けて中に入っていかれれば良かったのかも知れないけれども、僕にはそんな事はできなかった。ここでも、僕は、『逃げた』のだ。

そっと、忍び足で、
教室から離れた後は、全速力で

部室に戻り、机に手をついて、荒くなった息を整えようとする。
どう、考えていいかわからなかった。
叫び出したかった。

誰が悪い?誰が?
一体、誰が悪いんだ!?

目を見開き、口が乾く。
手が震え、背中に汗をじっとりとかいていた。

結局この日、沙也加が部室に現れることはなかった。
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