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天狐あやかし秘譚
第66章 奸智術数(かんちじゅっすう)

慌てて取り繕い、階段を駆け上がった。302号室の鍵は確かにバックに入っている。それを使って部屋に入る。
パチリ、と電気を付けると、
見知った部屋、馴染んだ匂い。狭く、雑然としながらもそれなりに愛着のある、確かに私の部屋がそこにあった。冷蔵庫を開くと、しっかりと自炊をするための食材が入っている。寝室には使い古したシングルのベッド。シーツに触れるとひんやりとしていた。
ダリ・・・?
少し、混乱してきた。
私はプロカメラマンを自称する彼氏に騙されてお金を取られて、そのショックで社用車で事故を起こして会社『さくら出版』をクビになって、それでアパートも更新ができなかった・・・んじゃなかったっけ?
それで、東北に旅行に行って、そこで・・・そこで・・・
狐の耳と尻尾の生えた超イケメン妖怪に出会った。
そして、いろんな事件に巻き込まれたけど、彼にいっぱい愛されて、幸せで・・・。
あれは夢?全部・・・?
・・・そう・・・だよね・・・
妖怪だなんて、幽霊だなんて、陰陽寮だなんて・・・そんなこと・・・
現実なわけ、ない。
そう考えたら、『ダリ』の顔もなんだかよく思い出せない気がする。
当然か・・・私、なんだろう。昼休みにそんな壮大な夢、見ていたのかしら?
そんなふうに思った。
ああ、お夕飯、準備しなきゃ。
ノロノロと室内着に着替える。
夕飯食べて、お風呂入って・・・早く寝よう。
なんだか、疲れているんだ、きっと、私。
「ねえ、ダリは食べない・・・」
言いかけて、ハッとする。部屋はしんと静まり返っていた。
そりゃそうだ、だって、私一人暮らし・・・
そこまで考えたとき、不意にぼろっと涙がこぼれてきた。
あれ・・・なんだろう・・・お・・・おかしいな・・・。
なんで?
なんでよ!?だって、私ずっとひとりで、ひとりで頑張ってきて・・・。
なのにどうして、こんなに胸が痛いの?
涙が再び溢れてくる。まなじりから溢れ、こぼれそうになった。
ピンポーン
玄関チャイムが鳴った。
あれ?誰か、来る予定・・・だったっけ?
それとも、配達か何かだろうか?
時刻はギリギリ宅急便の配送があってもおかしくない時間だった。
私は慌てて手で涙を拭って、玄関スコープから外を見た。
そこには、男性がひとり、立っていた。
パチリ、と電気を付けると、
見知った部屋、馴染んだ匂い。狭く、雑然としながらもそれなりに愛着のある、確かに私の部屋がそこにあった。冷蔵庫を開くと、しっかりと自炊をするための食材が入っている。寝室には使い古したシングルのベッド。シーツに触れるとひんやりとしていた。
ダリ・・・?
少し、混乱してきた。
私はプロカメラマンを自称する彼氏に騙されてお金を取られて、そのショックで社用車で事故を起こして会社『さくら出版』をクビになって、それでアパートも更新ができなかった・・・んじゃなかったっけ?
それで、東北に旅行に行って、そこで・・・そこで・・・
狐の耳と尻尾の生えた超イケメン妖怪に出会った。
そして、いろんな事件に巻き込まれたけど、彼にいっぱい愛されて、幸せで・・・。
あれは夢?全部・・・?
・・・そう・・・だよね・・・
妖怪だなんて、幽霊だなんて、陰陽寮だなんて・・・そんなこと・・・
現実なわけ、ない。
そう考えたら、『ダリ』の顔もなんだかよく思い出せない気がする。
当然か・・・私、なんだろう。昼休みにそんな壮大な夢、見ていたのかしら?
そんなふうに思った。
ああ、お夕飯、準備しなきゃ。
ノロノロと室内着に着替える。
夕飯食べて、お風呂入って・・・早く寝よう。
なんだか、疲れているんだ、きっと、私。
「ねえ、ダリは食べない・・・」
言いかけて、ハッとする。部屋はしんと静まり返っていた。
そりゃそうだ、だって、私一人暮らし・・・
そこまで考えたとき、不意にぼろっと涙がこぼれてきた。
あれ・・・なんだろう・・・お・・・おかしいな・・・。
なんで?
なんでよ!?だって、私ずっとひとりで、ひとりで頑張ってきて・・・。
なのにどうして、こんなに胸が痛いの?
涙が再び溢れてくる。まなじりから溢れ、こぼれそうになった。
ピンポーン
玄関チャイムが鳴った。
あれ?誰か、来る予定・・・だったっけ?
それとも、配達か何かだろうか?
時刻はギリギリ宅急便の配送があってもおかしくない時間だった。
私は慌てて手で涙を拭って、玄関スコープから外を見た。
そこには、男性がひとり、立っていた。

