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天狐あやかし秘譚
第65章 主客転倒(しゅかくてんとう)

麻衣が叫び声を上げ、ぎゅっと目をつぶりながら私を突き飛ばす。何が起きたかわからないまま、突き飛ばされた衝撃で私はよろめく。そして、さらにバランスを崩したところに、何かが足に絡みついてきていた。
え?!
ふらついたところに足を固定されたものだから、たたらを踏むこともできずに、私はその場に尻餅をついた。今度は両手にまた何かがしゅるしゅると絡みついてくる。
何!?なになに!?
咄嗟に何かが絡みついた右手に目を向けると、そこには大きな蛇がぐるりと巻き付いているのが見えた。
「ひいぃっ!!」
息を呑み、私は身をよじろうとする。つい乙女らしからぬ悲鳴を上げてしまったが、どうか許してほしい。なぜなら、そこにいた蛇は一匹二匹どころではなかったのである。いつの間にやら周囲にワラワラと溢れかえっており、群れをなして私の手足に巻き付いてきていたのだ。
「浦原さん!」
私を助け出そうと、木立の隙間から日暮が飛び出してくる。しかし、その彼女と私の間にも、蛇たちがにゅるにゅると数匹立ちはだかり、鎌首を持ち上げて警戒音を発して牽制をかけてきていた。日暮も咄嗟に何か迎撃をしようとしたのだろう、その腰につけてあった革袋に手をいれようとする。しかし、その動きを察知するや、蛇のうちの一匹がやにわに彼女の手に飛びかかろうとする。日暮としても、そんな蛇たちを躱すので精一杯になってしまっている。
そうこうしているうちに、私の方は体中を数十匹の蛇に絡みつかれ、身動きが取れないままに持ち上げられてしまった。
き・・・気持ち悪いいぃいい!!
悲鳴をあげなかった私を褒めてほしい。まずい、この蛇がもし毒蛇とかだったら・・・。その思いが頭をよぎる。報告のときに『なのはな園』の子どもたちがヘビ毒の中毒だったと言われていたのを思い出す。敵は毒蛇を操るのである。
そうだ!麻衣ちゃんは!?
そう思って、彼女の方に目をやった時、私は背筋がゾクリとした。
こんな異様な状況の中、麻衣は、笑っていたのだ。
「・・・お兄ちゃんたちの言う通りだった・・・。『おんみょうりょう』っていうところからくる悪い人たちが、麻衣がお父さんたちと会うのを邪魔しにくるから注意してって・・・」
そんな・・・。
え?!
ふらついたところに足を固定されたものだから、たたらを踏むこともできずに、私はその場に尻餅をついた。今度は両手にまた何かがしゅるしゅると絡みついてくる。
何!?なになに!?
咄嗟に何かが絡みついた右手に目を向けると、そこには大きな蛇がぐるりと巻き付いているのが見えた。
「ひいぃっ!!」
息を呑み、私は身をよじろうとする。つい乙女らしからぬ悲鳴を上げてしまったが、どうか許してほしい。なぜなら、そこにいた蛇は一匹二匹どころではなかったのである。いつの間にやら周囲にワラワラと溢れかえっており、群れをなして私の手足に巻き付いてきていたのだ。
「浦原さん!」
私を助け出そうと、木立の隙間から日暮が飛び出してくる。しかし、その彼女と私の間にも、蛇たちがにゅるにゅると数匹立ちはだかり、鎌首を持ち上げて警戒音を発して牽制をかけてきていた。日暮も咄嗟に何か迎撃をしようとしたのだろう、その腰につけてあった革袋に手をいれようとする。しかし、その動きを察知するや、蛇のうちの一匹がやにわに彼女の手に飛びかかろうとする。日暮としても、そんな蛇たちを躱すので精一杯になってしまっている。
そうこうしているうちに、私の方は体中を数十匹の蛇に絡みつかれ、身動きが取れないままに持ち上げられてしまった。
き・・・気持ち悪いいぃいい!!
悲鳴をあげなかった私を褒めてほしい。まずい、この蛇がもし毒蛇とかだったら・・・。その思いが頭をよぎる。報告のときに『なのはな園』の子どもたちがヘビ毒の中毒だったと言われていたのを思い出す。敵は毒蛇を操るのである。
そうだ!麻衣ちゃんは!?
そう思って、彼女の方に目をやった時、私は背筋がゾクリとした。
こんな異様な状況の中、麻衣は、笑っていたのだ。
「・・・お兄ちゃんたちの言う通りだった・・・。『おんみょうりょう』っていうところからくる悪い人たちが、麻衣がお父さんたちと会うのを邪魔しにくるから注意してって・・・」
そんな・・・。

