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天狐あやかし秘譚
第65章 主客転倒(しゅかくてんとう)
肩を越すほどのストレートの髪の毛に、薄い青色のワンピース、白い靴下に少し汚れたピンク色のスニーカーを履いたその子は、会議のときに資料写真で見たままの姿をしていた。間違いない、この子が片霧麻衣だ。

私達が藪をかき分けてきた音を聞いて、何かが来たと思ったのだろう。瞳に恐怖の色を宿し、こちらを凝視していた。見た所、周囲には人の気配はない。物音もしない。彼女も怪我などはないようだ。

縛られている様子もないのに逃げようとしていないのは、相当脅されたかなにかしたせいかもしれない。私達のことを、自分を攫った『まつろわぬ民』の一員だと勘違いしている可能性もある。

「片霧・・・麻衣さんだよね?大丈夫、安心して・・・私達は助けに来たのよ」

木立の影から姿を見せ、私は優しく声を掛けた。こちらに敵意がないことを示すためにゆっくりと動かなくてはいけない。
「ちょ・・・浦原さん、もう少しあたりをよく見ないと!」
足元で藪の中に屈んだまま、日暮が言った。

ダメだ。一刻も早く助けないと・・・だって、あんなに怯えている。

麻衣は倒木をぎゅっと両手で掴むと、私を見て体を震わせていた。

「浦原さん!」

日暮が私のパンツの裾を引っ張るが、早くしないと本当に別の『まつろわぬ民』が来てしまう可能性すらある。あと、余り可能性は高くないかもしれないけど、彼女が私達を敵とみなして逃げ出してしまうことだってありうる。そうなってしまえば、この森の中だ。小さな子供のほうが小回りが効いてしまう。見失ったら一大事だ。

「怖がらないで、大丈夫・・・私達、陰陽寮ってところから来たの。あなたの味方よ」

麻衣の目が大きく見開かれる。
「おんみょう・・・りょう・・・?」

どうやら、自分に助けがきたということがまだ信じられない、というようなふうだった。無理もない。あんな大男やワケのわからない術を駆使する男どもに拉致されて、生きた心地がしなかったに違いない。

私は、一歩、一歩、慎重に踏み出す。
あと、2メートルほどのところに近づいた。

「た・・・」

じわりと麻衣の目に涙が浮かぶ。
もう大丈夫だよ・・・。

ゆっくりと手を伸ばし、私は麻衣の手を取ろうとした。

「助けてっ!!」
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