この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第65章 主客転倒(しゅかくてんとう)

ガタガタと、文字通り歯の根が合っていない様子だ。いやいや怖がり過ぎでは?と思うが、行きの新幹線で日暮が言っていたことを思い出すと納得である。
『基本、調査や占術担当の占部が戦線に出ることなんてありません』
『妖怪はおろか、人間の敵対勢力にすら対峙したことがないのです』
そう言っていた。占部でも、さすがに『丞の一位』である土門杏里は戦線に出て戦うことがあるらしいが、それにしても祓衆ほどの戦闘能力もなければ、祭部ほどの防御・戦闘補助能力は有していないとのことだ。基本、占部衆は裏方なのである。
『知ること、調べること、が私達に課せられた使命なのです』
と、いうことで、彼女にとっては今回のように爆発する妖怪に遭遇したり、神宝使いとやりあうことなど、人生初体験なわけである。それを踏まえると、先程日暮が下した『追撃指示』がどれほどの決意で行われたのか、わかるというものだ。
広場から離れるにつれ、木々はさらに鬱蒼としてくる。日が暮れかけているということもあり、あたりはより薄暗く、気のせいかも知れないが、ひんやりとした感じもしてきている。あれほどガタガタと震えてはいるが、一応、自分の任務を自覚しているらしい日暮が私を先導するように歩こうとする。
パキっ!
私の足元から音がした。乾いた木の枝を踏んでしまったようだ。その音に反応し、日暮が『ひぃっ!』と悲鳴を上げて体をビクッとさせる。
「あ・・・あの・・・私が先を歩きましょうか?」
恐る恐る言うと、日暮はガタガタと身体を震わせながら、こくこくと頷いた。そういうわけで前後の順を交代して暫く歩くのだが、日暮としては、今度は自分の後ろに何があるのかが気になって仕方なくなってきてしまったようで、
「う・・・浦原さん・・・、よ・・・横並びに・・っ!」
などと言い出した。結果的に、二人の女子がぴったり寄り添い合うようにして歩くことになってしまう。
歩きにくい。
「あれは・・・?」
広場から30メートルほど離れたところに、少し開けた場所があった。私も日暮も手にした守護石をぎゅっと握りしめ、恐る恐る木立の隙間から中を覗いてみた。
薄暗くジメッとした、5メートル四方ほどの空間に、朽ちかけた倒木がある。そこには、体を震わせているひとりの子供がいた。
『基本、調査や占術担当の占部が戦線に出ることなんてありません』
『妖怪はおろか、人間の敵対勢力にすら対峙したことがないのです』
そう言っていた。占部でも、さすがに『丞の一位』である土門杏里は戦線に出て戦うことがあるらしいが、それにしても祓衆ほどの戦闘能力もなければ、祭部ほどの防御・戦闘補助能力は有していないとのことだ。基本、占部衆は裏方なのである。
『知ること、調べること、が私達に課せられた使命なのです』
と、いうことで、彼女にとっては今回のように爆発する妖怪に遭遇したり、神宝使いとやりあうことなど、人生初体験なわけである。それを踏まえると、先程日暮が下した『追撃指示』がどれほどの決意で行われたのか、わかるというものだ。
広場から離れるにつれ、木々はさらに鬱蒼としてくる。日が暮れかけているということもあり、あたりはより薄暗く、気のせいかも知れないが、ひんやりとした感じもしてきている。あれほどガタガタと震えてはいるが、一応、自分の任務を自覚しているらしい日暮が私を先導するように歩こうとする。
パキっ!
私の足元から音がした。乾いた木の枝を踏んでしまったようだ。その音に反応し、日暮が『ひぃっ!』と悲鳴を上げて体をビクッとさせる。
「あ・・・あの・・・私が先を歩きましょうか?」
恐る恐る言うと、日暮はガタガタと身体を震わせながら、こくこくと頷いた。そういうわけで前後の順を交代して暫く歩くのだが、日暮としては、今度は自分の後ろに何があるのかが気になって仕方なくなってきてしまったようで、
「う・・・浦原さん・・・、よ・・・横並びに・・っ!」
などと言い出した。結果的に、二人の女子がぴったり寄り添い合うようにして歩くことになってしまう。
歩きにくい。
「あれは・・・?」
広場から30メートルほど離れたところに、少し開けた場所があった。私も日暮も手にした守護石をぎゅっと握りしめ、恐る恐る木立の隙間から中を覗いてみた。
薄暗くジメッとした、5メートル四方ほどの空間に、朽ちかけた倒木がある。そこには、体を震わせているひとりの子供がいた。

