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天狐あやかし秘譚
第128章 悲歌慷慨(ひかこうがい)
その言葉に、キヌギヌはドキリとした。
『神宝はもともと中原の民の宝だったんだ。それを大和の民が奪っていった・・・。だからそもそも奴らにはこれを使いこなすことなんてできないんだ。神宝を使えるのは中原の民の血筋のものだけ・・・だから、君たち神宝使いは、僕と同じ血族・・・時代を超えた家族と言ってもいい』
緋紅は続けた。
『たとえ裏切りがあったとしても、家族を失うのは体の一部を失うように悲しい・・・』
その目を見て、キヌギヌは、この人こそ、自分を深く理解し、愛してくれる人だと、また確信を強めたのだった。
「・・・ヌ、キヌギヌ・・・」
ぼんやりとしたキヌギヌが自分の名を呼ぶ声に気づく。その声が緋紅のものだとわかるのにちょっとだけ時間がかかった。
「は、はい!」
「まだ、身体が本調子ではないのかい?」
緋紅が優しく声をかける。なぜなら、キヌギヌもまた、あの鞍馬山の戦いの最後に、天狐ダリに向けて辺津鏡の力を最大限引き出したことで、生命力にかなり深い痛手を負ったのだ。
従者を贄とした足玉による治療を受けたことで、一昨日あたりにやっと復調したくらいだった。
「いえ・・・もう身体は大丈夫です」
「そうか、それは良かった。君にまで何かあったら僕は困ってしまうからね」
「そんな・・・そんな、もったいないお言葉です」
キヌギヌは平伏する。言葉通り、心底そう思ったのだ。
「だったら、今夜は久しぶりに伽を頼んでいいかな?」
トクン、と心臓が高鳴る。
姉と行動をともにした期間も含めれば、2週間以上、夜伽をすることができなかった。緋紅への愛情もあるが、何より身体が求めているのを感じていた。
しゅっしゅっと衣擦れの音がした。ふわりと優しい匂いと温度を感じる。緋紅が、目の前まで来ているのだ。
「顔を上げてご覧・・・キヌギヌ」
緋紅が腰を落としたのだろう。彼の匂いがふわりと強く感じられるようになる。するりと顎の部分に手が入り込んできたかと思うと、くいと、おとがいを引き上げられる。
あ・・・
緋紅の目が、意外なほど近くにあった。
その目に見つめられて、頬が紅潮するのを止められなかった。
「良い表情をするようになったね・・・高校生の頃の君とは大違いだ」
『神宝はもともと中原の民の宝だったんだ。それを大和の民が奪っていった・・・。だからそもそも奴らにはこれを使いこなすことなんてできないんだ。神宝を使えるのは中原の民の血筋のものだけ・・・だから、君たち神宝使いは、僕と同じ血族・・・時代を超えた家族と言ってもいい』
緋紅は続けた。
『たとえ裏切りがあったとしても、家族を失うのは体の一部を失うように悲しい・・・』
その目を見て、キヌギヌは、この人こそ、自分を深く理解し、愛してくれる人だと、また確信を強めたのだった。
「・・・ヌ、キヌギヌ・・・」
ぼんやりとしたキヌギヌが自分の名を呼ぶ声に気づく。その声が緋紅のものだとわかるのにちょっとだけ時間がかかった。
「は、はい!」
「まだ、身体が本調子ではないのかい?」
緋紅が優しく声をかける。なぜなら、キヌギヌもまた、あの鞍馬山の戦いの最後に、天狐ダリに向けて辺津鏡の力を最大限引き出したことで、生命力にかなり深い痛手を負ったのだ。
従者を贄とした足玉による治療を受けたことで、一昨日あたりにやっと復調したくらいだった。
「いえ・・・もう身体は大丈夫です」
「そうか、それは良かった。君にまで何かあったら僕は困ってしまうからね」
「そんな・・・そんな、もったいないお言葉です」
キヌギヌは平伏する。言葉通り、心底そう思ったのだ。
「だったら、今夜は久しぶりに伽を頼んでいいかな?」
トクン、と心臓が高鳴る。
姉と行動をともにした期間も含めれば、2週間以上、夜伽をすることができなかった。緋紅への愛情もあるが、何より身体が求めているのを感じていた。
しゅっしゅっと衣擦れの音がした。ふわりと優しい匂いと温度を感じる。緋紅が、目の前まで来ているのだ。
「顔を上げてご覧・・・キヌギヌ」
緋紅が腰を落としたのだろう。彼の匂いがふわりと強く感じられるようになる。するりと顎の部分に手が入り込んできたかと思うと、くいと、おとがいを引き上げられる。
あ・・・
緋紅の目が、意外なほど近くにあった。
その目に見つめられて、頬が紅潮するのを止められなかった。
「良い表情をするようになったね・・・高校生の頃の君とは大違いだ」

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