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天狐あやかし秘譚
第128章 悲歌慷慨(ひかこうがい)
♡ーーーーー♡
【悲歌慷慨】世の中や自分の定まらない運命に憤り、悲しんで嘆くこと。
運命はなんて悲しくて、なんて・・・思うようにならないんだろう・・・みたいな。
♡ーーーーー♡
ライターで火をつけようとしたが、風に煽られてすぐに消えてしまう。見かねたダリが妖術の焔を貸してくれた。
束ねた線香に炎が移り、少し振ると幾筋もの香煙が上がる。その墓の前にしゃがみ込み、両手を合わせる私の背後には、ダリ、そして御池がいた。
旧家にふさわしい立派な墓には『藤塚家代々之墓』と刻まれていた。ただ、先程までは手入れが行き届かずにあちこち汚れが目立っていた。私と御池とで掃除をしたものの、その痕跡は敷石に走るいくつものヒビからうかがい知ることができた。
花は持って帰ったほうがいいかもしれない。
きっと置いといても誰もここを訪れず、朽ちていくだけだろうから。
「綾音さん」
いつまでも顔を上げない私を気遣ったのだろう。御池がおずおずと声をかけてきた。
「あ、うん・・・」
私は予定通り仏花を取り上げると、立ち上がってもう一度その墓を見た。
今この墓には、藤塚水無・・・スクセが眠っている。あの時のことをまた思い出し、どうしようもない悔恨に、鼻の奥が痛くなった。
「そうか・・・もう1週間か・・・」
スクセたちと鞍馬山で戦った日から、あっという間だった。結局、ダリの献身的な介抱にもかかわらず、彼女の生命を繋ぎ止めることはできなかったのだ。
『もう、ダリさんの前に立ちふさがった段階で、スクセの生命は尽きかけていたんです』
これは、戦いのあと、司法解剖の結果を伝えてくれた時の御池のセリフだった。
『おそらく、スクセ・・・藤塚水無は八握剣の適合者ではなかった。にも関わらず、その力を六段目まで引き出したのです。身体は無事でも生命力そのものがすでに枯渇しかけていたんです』
そのことを水無が知っていたかどうかはわからないと言うが、私は分かっていたのではないかと思った。分かっていて、敢えて命をかけたのだと思った。
私の脳裏にあの時の情景がありありと蘇った。
【悲歌慷慨】世の中や自分の定まらない運命に憤り、悲しんで嘆くこと。
運命はなんて悲しくて、なんて・・・思うようにならないんだろう・・・みたいな。
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ライターで火をつけようとしたが、風に煽られてすぐに消えてしまう。見かねたダリが妖術の焔を貸してくれた。
束ねた線香に炎が移り、少し振ると幾筋もの香煙が上がる。その墓の前にしゃがみ込み、両手を合わせる私の背後には、ダリ、そして御池がいた。
旧家にふさわしい立派な墓には『藤塚家代々之墓』と刻まれていた。ただ、先程までは手入れが行き届かずにあちこち汚れが目立っていた。私と御池とで掃除をしたものの、その痕跡は敷石に走るいくつものヒビからうかがい知ることができた。
花は持って帰ったほうがいいかもしれない。
きっと置いといても誰もここを訪れず、朽ちていくだけだろうから。
「綾音さん」
いつまでも顔を上げない私を気遣ったのだろう。御池がおずおずと声をかけてきた。
「あ、うん・・・」
私は予定通り仏花を取り上げると、立ち上がってもう一度その墓を見た。
今この墓には、藤塚水無・・・スクセが眠っている。あの時のことをまた思い出し、どうしようもない悔恨に、鼻の奥が痛くなった。
「そうか・・・もう1週間か・・・」
スクセたちと鞍馬山で戦った日から、あっという間だった。結局、ダリの献身的な介抱にもかかわらず、彼女の生命を繋ぎ止めることはできなかったのだ。
『もう、ダリさんの前に立ちふさがった段階で、スクセの生命は尽きかけていたんです』
これは、戦いのあと、司法解剖の結果を伝えてくれた時の御池のセリフだった。
『おそらく、スクセ・・・藤塚水無は八握剣の適合者ではなかった。にも関わらず、その力を六段目まで引き出したのです。身体は無事でも生命力そのものがすでに枯渇しかけていたんです』
そのことを水無が知っていたかどうかはわからないと言うが、私は分かっていたのではないかと思った。分かっていて、敢えて命をかけたのだと思った。
私の脳裏にあの時の情景がありありと蘇った。

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