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天狐あやかし秘譚
第127章 有為転変(ういてんぺん)
洗脳の効果かもしれない。普段の御九里では考えられないほどの速度で、森の中を疾走する。長引けば再び辺津鏡の力で姿をくらませてしまうかもしれない。そうなったら今度こそ捕らえることは不可能となる。キヌギヌに時間を与えるわけにはいかない。

バチっと右手の槍に紫電がまとわりつき、その雷の力が足に流れ込む。

『鳴神』

呼ぶ声とともに、物理的にありえないほどの加速がダリの身体を一気に推進させる。それこそ瞬きほどの時間でダリは10メートルほど先にいる御九里の前に回り込み、その腹に古槍の石づきをめり込ませた。

「ぐえっ!」

奇妙な声を上げ、御九里が白目を剥く。いくら洗脳が施されているとは言え、気絶させてしまえば動くことはできない。それでも念のため妖力の縄で念入りに捕縛する。

そして、同じく横に転がったキヌギヌにも同じ捕縛術をかけた。

――なんだ?・・・手応えが

ぐるりと妖力で縄をかけたのだが、ダリはその感触に違和感を覚える。そもそも、このような状況にも関わらず身動きひとつとらず、声すら上げない。

さっと手をその身体に触れたダリが舌打ちをした。

――やはり神宝・・・厄介だ

そう、御九里が背負っていたキヌギヌは、知覚を歪めてそうあるように見せかけていた偽物だったのである。

ダリの目は、今、自分が来た方向に素早く向けられた。
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