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天狐あやかし秘譚
第127章 有為転変(ういてんぺん)
実際、先ほど土門が登場するまでの間、土門はずっと森の中で隠形術を駆使して隠れていたのだ。そして、キヌギヌが現れ、十分引きつけてから夜魂蝶を展開する手筈になっていたのである。しかし、夜魂蝶を出すタイミングを伺っている内に、キヌギヌによって御九里を人質に取られてしまい、土門も出るに出られなくなってしまっていたのだ。そこにきて、偶然にも綾音に化けた未架神を洗脳しようとしたキヌギヌがフリーズしたことで大きな隙ができて夜魂蝶を勧請できた・・・というわけだ。

かなり危ない橋を渡ったが、結果的にはダリと陰陽寮の面々とが張り巡らせた何重もの『準備』が功を奏したわけである。

「ふっ・・・」

キヌギヌが笑った。

「呪力の収束を妨害し、視線による洗脳を防げば・・・それでいい・・・と?」

ん?

その言葉に一瞬土門の眉間に皺が寄る。この中で彼女だけがその言葉の意味を理解したのだ。

「まずいのです!」
「殺せ、スクセ!こい、御九里!」

土門とキヌギヌがほぼ同時に声を上げる。そして、土門が反応するよりも早く、キヌギヌの言葉がスクセと御九里を突き動かした。スクセが土門に向かって懐剣を振りかざし襲いかかる。そして、御九里が鬼丸国綱改を横薙ぎにして夜魂蝶を切り裂いていく。

「ちっ!」

御池は自身の式神・未架神を土門を守るために彼女の方に走らせていた。それを見て、ダリは一瞬遅れて御九里に向かって走り、古槍の石づきを突き出していく。

二人が同時に動いたことで、ダリの判断が一瞬ブレてしまい、このブレが致命的だった。間一髪、御九里の剣が早く空を切る。ひと薙ぎで数十の夜魂蝶を消し去り、彼はそのまま身体を光の結界に滑り込ませていった。

バサ!

そして、そのまま桃色の巫女服を身に着けたキヌギヌを抱きかかえると夜魂蝶の群れを突き破って森の中に消えていった。

「逃がすか!」

ここで御九里と辺津鏡の巫女を逃がしては元も子もない。ちらりと見るとスクセの方は御池と未架神が取り押さえている。あれはあのままで大丈夫なはずだ・・・そうダリは判断した。

――御九里がいてはおいそれと妖力を使うわけにはいかぬか・・・
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