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天狐あやかし秘譚
第126章 九死一生(きゅうしいっしょう)
☆☆☆
「ダリ・・・」

スクセの独白を聞き終えて、なんとも言えない気持ちになった私は、ダリの方を見た。ダリ自身は、いまだ厳しい視線を彼女に向けている。

それはそうだろう。さきほどまで生きるか死ぬかの戦いを繰り広げ、もっと言えば、私の命を人質にした、という思いもあったに違いない。もしかしたら、この話自体も、私達を欺くウソであると考えている可能性すらある。

でも、私にはどうしてもそう思えなかった。
確かに、沖津鏡で妹の死を見てしまった、というのは彼女が言ってるだけだし、証明することはできない。すべてが嘘であるという可能性もある。
だけど何かが引っかかるのだ。

そもそも、彼女はなぜたったひとりでダリに挑んだのだろう?

先程の御池の話だと、麓には『オキナ』という名の、おそらくは神宝使いが襲来している。本気で『まつろわぬ民』たちがダリを邪魔とみなし、殺そうとするなら、もっと狡猾に、もっと組織的に攻撃してくるのではないだろうか?

それにそもそも、今までのまつろわぬ民のやり方は、私達をどうこうしようというよりも、神宝を集めようとか、黄泉平坂を開いて世界を混乱させようとか、どちらかというと大きな計画のもとに動いていたように感じる。そこに私達が邪魔に入るので交戦をしていたわけで、最初から私達を殲滅しようなんて思っていないように思うのだ。

それが、今回は違った。

スクセの目的は徹頭徹尾、ダリの抹殺なのだ。

これまでのスクセの行動と、先程の話し、それから、高森さんが話してくれた沖津鏡の性質はピタリと合致している。

「御池さん・・・」
御池さんはどう考えるだろうか?彼女もまた、難しい顔をしていた。

もし、スクセの妹の水有・・・まつろわぬ民たちの言葉では『キヌギヌ』か・・・を救うことは可能かもしれない。御池の未架神を使うなり、ダリの幻術を使うなりして、その光景を再現してやれば、沖津鏡の呪いは解けるということが分かっていたからだ。

どちらにせよ、どちらか、もしくは双方の支援が必要になる。

「スクセは嘘をついていないと思うんだよ」
一応言ってみた。

「しかし、そうは言っても、綾音さん・・・。
 ここで私達がこの人の妹を救うメリットは何でしょう?」

うっ・・・

冷静に御池に突っ込まれ、私はたじろいでしまう。
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