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天狐あやかし秘譚
第126章 九死一生(きゅうしいっしょう)
先ほどから『綾音』が弓と矢で使っていた術式は矢に込められた力半分、未架神自身の力半分だったわけである。多分、実際の綾音が同じ弓矢を使っても、あれほどの出力は出ないと思われた。

前回のスクセとの戦いで、幻術を使ったことで『予言』を回避できると気づいたダリは、今日の決戦を迎えるに当たって、こんな提案を御池と綾音にしたのだ。

『我が綾音を身に着け守る。その間、綾音の影武者を立て、その者に『予言』の情景をなしてもらう』

最初ダリは自らの幻術を使おうと考えていたようだったが、そこに御池が自らの式神の力を明かしたのだ。

『私の未架神を使えば、より確実です』

実際、本物の綾音と未架神がコピーした『綾音』は、昨日の夜半からずっと入れ替わったままだったのだ。ダリの懐の中、それが最も安全な場所であり、そこに本物をおいたままで、未架神が予言を成就すれば、沖津鏡の呪縛は解けるというわけだ。

「ここに来るまでに、一回、オキナという的に未架神が切り裂かれたので一瞬どうしようと思いました。しかし、実際にこちらに来てみたとき、スクセがその事実を知らないと分かったので、作戦を続行することにしたんです。」

未架神は『形のない式神』なので、普通の人間なら死ぬようなダメージがあっても、身体が変形するだけで死ぬことはない。しかし、その情報がもしスクセに伝わっていたら、偽物であることがバレてしまい、作戦がご破算になってしまう可能性があった。

「私達が唯一懸念していたのは、予言の成就場所がどこでもいいのか、それともあなたの目の届く範囲でなければならないのか・・・その予想がつかないことでした」

だからこそ、『綾音』をスクセの近くにつれてくる必要があったのだ。それも、夜が明けて、死の条件が揃ってから。

そして、実際にその条件が奇しくも先程、全て揃ったわけだ。

スクセがいて、『綾音』がいる。
真昼のごとく周囲が明るくなっている。

そこで、『綾音』は予言通りの状況で『死んだ』。
固められた未来は現実となり、未来は再び『未定』の状態に戻ったわけだ。

「そんな・・・そんな方法が・・・」

スクセがつぶやく。
肩が震えたのは、生命力を失って身体に力が入らないからばかりではなかった。

――もしそれが本当なら・・・水有も・・・水有も・・・
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