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天狐あやかし秘譚
第126章 九死一生(きゅうしいっしょう)
コロォォン
しかし、想像していた衝撃が御池たちを襲うことはなかった。代わりに、先ほどから結界周囲を轟々と吹きすさんでいた高熱を含む風の音が凪ぎ、澄んだ、とても澄み渡った美しい鐘の音が辺りに響き渡った。
――え!?
ゆっくりと目を開いた御池はそこに信じられない光景を見た。
ダリの突き出した槍の穂先が、スクセが振り下ろそうとした剣をただ一点で食い止めていた。そこに光が集中し荒れ狂いながらも、力は絡み合って空に立ち上っていた。
「すごい・・・八握剣の力を巻き込んで空に逃がしている・・・!?」
ダリが放った術は、天魔反戈に込められた古の力の一端を解き放つものだった。それは、地を固め、天地を分かち、世界を平定した力・・・荒れ狂う原初の世界を治めた平穏の音を奏でた天地創造の御業の一部だった。
だが、スクセの方も力を弱めるつもりはないようだった。握りに力を込め、振り下ろす太刀は更なる神力を奮っていく。
ぐぐっ・・・
スクセの太刀がダリの槍を押し返し、ダリが全身でそれを受け止め、また押し返す。拮抗した力同士がぶつかりあい、鍔迫り合いを繰り広げていく。
――今のうち・・・か!?
力が拮抗している今なら、結界を解いて逃げることが可能かもしれない。御池はそう判断した。おそらくダリもそう考えているに違いない。今ここで作戦を実行に移せない以上、自分らがいること自体がダリにとって負担になる可能性のほうが高い。
「いいですか、いつつ数えたら結界を解きます。そうしたら、全速力で山を駆け下ります!」
御池は背後に向かって声をかけた。頷いたかどうかは見えないのでわからないが、伝わったと信じることにする。
「5・・・」
スクセの剣をダリが少しだけ押し返す様子が見えた。
「4・・・」
スクセが歯を食いしばり、その唇の端からつつっと血が滴る。血は流れ、顎に到達しようとしていた。
「3・・・」
ぐいとダリがその右足を踏み込み、更にスクセを押し返す。八握剣の放つ力の光がダリの放つ神力に抑えられ、ゆらりと揺らいだように見えた。
「2・・・」
スクセが断末魔にも似た悲壮な叫び声を上げる。顎を伝った真紅の血が、そこからぽとりと地面に向かって落ちていく。
「1・・・」
しかし、想像していた衝撃が御池たちを襲うことはなかった。代わりに、先ほどから結界周囲を轟々と吹きすさんでいた高熱を含む風の音が凪ぎ、澄んだ、とても澄み渡った美しい鐘の音が辺りに響き渡った。
――え!?
ゆっくりと目を開いた御池はそこに信じられない光景を見た。
ダリの突き出した槍の穂先が、スクセが振り下ろそうとした剣をただ一点で食い止めていた。そこに光が集中し荒れ狂いながらも、力は絡み合って空に立ち上っていた。
「すごい・・・八握剣の力を巻き込んで空に逃がしている・・・!?」
ダリが放った術は、天魔反戈に込められた古の力の一端を解き放つものだった。それは、地を固め、天地を分かち、世界を平定した力・・・荒れ狂う原初の世界を治めた平穏の音を奏でた天地創造の御業の一部だった。
だが、スクセの方も力を弱めるつもりはないようだった。握りに力を込め、振り下ろす太刀は更なる神力を奮っていく。
ぐぐっ・・・
スクセの太刀がダリの槍を押し返し、ダリが全身でそれを受け止め、また押し返す。拮抗した力同士がぶつかりあい、鍔迫り合いを繰り広げていく。
――今のうち・・・か!?
力が拮抗している今なら、結界を解いて逃げることが可能かもしれない。御池はそう判断した。おそらくダリもそう考えているに違いない。今ここで作戦を実行に移せない以上、自分らがいること自体がダリにとって負担になる可能性のほうが高い。
「いいですか、いつつ数えたら結界を解きます。そうしたら、全速力で山を駆け下ります!」
御池は背後に向かって声をかけた。頷いたかどうかは見えないのでわからないが、伝わったと信じることにする。
「5・・・」
スクセの剣をダリが少しだけ押し返す様子が見えた。
「4・・・」
スクセが歯を食いしばり、その唇の端からつつっと血が滴る。血は流れ、顎に到達しようとしていた。
「3・・・」
ぐいとダリがその右足を踏み込み、更にスクセを押し返す。八握剣の放つ力の光がダリの放つ神力に抑えられ、ゆらりと揺らいだように見えた。
「2・・・」
スクセが断末魔にも似た悲壮な叫び声を上げる。顎を伝った真紅の血が、そこからぽとりと地面に向かって落ちていく。
「1・・・」

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