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天狐あやかし秘譚
第125章 危機一髪(ききいっぱつ)
だけど、一夜に愛してもらえるのはいつもひとりだけ。
ここで選ばれなければ、空っぽになったような身体を抱えながら、一人寝床に戻るだけなのだ。そして、どちらが選ばれるか、そこに法則はなかった。

私が三夜連続で選ばれることもあれば、水有ばかり4日間続いたこともある。一日おき、交互に愛されたこともあった。

一昨日は水有だった。昨日も・・・だから、今日こそは・・・そんな思いが私にはあったのだ。

「今日は・・・どうするかな・・・」

緋紅様が必死に額づく私たちを見て目を細めながら言う。

お願い、私を!

昨晩はあまりにも寂しくて、自分で自分を慰めてしまった。特に自分と同じ顔をした妹が、今まさに自分が求めてやまない男性と愛の行為にふけっていると思うと、嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。

多分、私が選ばれれば、今度は水有がそういう気持ちになるのだろうけど・・・。

「うん、スクセにしよう」

瞬間、ピクリと肩が震えるのがわかる。次いで胸の奥からゾクゾクとした興奮が湧き上がり、その予感だけで、ぬるりとした女の蜜が溢れてきそうになる。

水有がどう思うか・・・それは分かっていたが、それでも、この悦びに代えられるものなど今の私たちにはないのだ。

緋紅様に抱かれたい。身体の芯まで愛されたい。
そう願うように、緋紅様に心の底から躾けられてしまっていたと言ってもいい。

「はい・・・」

顔を上げる。頬が熱い。多分、ピンク色に染まっていることだろう。ちらりと水有を見ると、額づいたままの姿勢だったが、よく見ると肩が小刻みに震えていた。

ごめん・・・水有。

一瞬はそう思ったが、緋紅様に肩を抱かれると、その匂いと温かさを前に、あっという間にその思いは消し飛んでしまった。
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