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天狐あやかし秘譚
第125章 危機一髪(ききいっぱつ)
☆☆☆
あの日見た、『天狐が水有を殺す未来』。

それがある限り、今、この瞬間にでも、水有が死んでしまう可能性がある。それは耐えられないことだった。少なくとも、あの時見た、いつのことかわからない未来が訪れるまでは、天狐を自身に引きつけておかなければならない。そして、殺さねばならないのだ。

沖津鏡の固めた未来を破る唯一の方法。
それは、その神力を上回る力で、運命を捻じ曲げること・・・しかない。

「まとめて・・・屠ってやる」

綾音が来ようと、陰陽師がひとり増えようと構うものか。
今ここで、こいつを殺さなければ水有が死ぬ。

私に残された最後の肉親。
殺させて・・・たまるものか!

スクセは震える足にムチを打ち、立ち上がった。そして、八握剣を正眼に構える。体中から圧倒的な気がその身体から立ち上り、その力のせいで、光すら歪んで伝わるかのようだった。

その目は死を覚悟していた。
スクセがつぶやく。

「八握剣・・・六段目」

瞬間、彼女の紡いだ言葉が剣の権能を更に一段階引き上げる。
ゴウと彼女を中心に空気の塊が周囲に押しやられ、木々がなぎ倒されていく。綾音が悲鳴を上げ、御池が彼女が吹き飛ばないようになんとか支えようと手を伸ばす。

天狐が目を見張る中、スクセの身体から生命力が陽炎のように立ち昇り、空を焦がすほどの光が、辺りを真昼のように照らし出していった。
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