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天狐あやかし秘譚
第121章 籠絡懐柔(ろうらくかいじゅう)
「あの是永って人、誰?」
水有が不審そうに聞いてくる。それもそうだろう。今までは私たちの部屋は私たちのものだったが、お世話係ということで、急に彼女が部屋にべったりいるようになったのだ。

水有が不審に思うのも無理はない。

もちろん彼女の目的は私がオナニーをしないかどうかの監視役だった。
結局夕飯を終え、お風呂に入ったあたりで、やっぱり水有に悪いなと思った私は、是永に貞操帯をつけるから下がっててほしいと告げた。

是永は私の貞操帯にしっかりと鍵をかけると、言われたとおりに部屋から出ていってくれた。

とりあえずこれで水有がストレスを抱えることはないはずだ。これでやっと息がつけるかな・・・。

自室の机に座り、ぼんやりとする。この部屋には窓がない。見えるのは机の上にある参考書と、飾ってある写真立て。写真は水有と二人、中学の入学式のときに撮ったものだった。制服姿の私に、同じく制服姿の水有がおんぶするみたいにのしかかっている。横には『入学式』の立て看板があった。

確か、この写真を撮ったのは父だったはずだ。

他にも写真はあったはずだが、全て火事で焼けてしまった。そして、たとえ残っていたとしても、父や母の写真をここに飾ることは、たぶん今の私にはできない。

今の私にとって、『家族』と言えるのは水有だけなのだ。
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