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天狐あやかし秘譚
第120章 十網九罠(じゅうもうきゅうわ)
「それ・・・どうして・・・」
思わず口に出してしまう。
「うん、これを伝えるか迷ったんだけど、やっぱり君を放っておけなくて・・・実は以前、君のお父様から君との関係について、相談を受けていたんだ」
ドキドキドキ・・・心臓の鼓動が激しく乱れる。
父のネットリとした体温、執拗な舌での愛撫、そして、あの日の燃え盛る部屋の中での狂気の表情・・・その全てが一気に頭を駆け巡る。
「父・・・が・・・」
喉がカラカラだった。一体父はなんで緋紅に相談なんか・・・。
「お父さんはね、娘と関係を持ってしまったことを悔いていたんだよ。でも同時に、いろいろなことがうまくいかなくて、そのたった一つの癒しであるとも言って深く悩んでらしたんだ。」
「お父さん・・・」
父もまた悩んでいたとしたら、やっぱり悪いのは私なのではないだろうか。あのとき、父をもっと力いっぱい拒絶していれば、最初の交わりのあと、すぐに誰かに相談していれば・・・。
頭がぐるぐると混乱する。
でも、途中から、私自身も気持ちよくなってはいなかったか?
私の身体は確かにメスの悦びに支配され、自分の欲望から父を誘惑してしまっていたのではないか?
普段考えないようにしていた恐ろしい考えが、私の心の中に黒々と湧き上がってきて止められなくなる。寒くもないのに、身体が小刻みに震えてきてしまう。
その時だった。
「水無、君は悪くない」
きっぱりと緋紅が言った。ハッとして彼の方に目をやる。月明かりに青く頬を染めた陶器のように美しい肌を持つ青年がそこにいた。
その瞳は深い愛情に満ちているように私には感じられた。
「水無、君は・・・悪くない」
もう一度。ゆっくりと、力強く。私の心の奥に届かせようとするかのように。
その言葉に、不意にホロリと、涙がこぼれ落ちた。
「だ・・・って・・・わ、私が、私があんなことをしなければ・・・お父さんは、お父さんは・・・」
いったん溢れだすと、涙を止めることができなくなった。そんな、泣き続ける私のそばに、緋紅はゆっくりと居続けてくれた。
どのくらい泣いていただろうか。私の心が少しだけ落ち着き始めた頃、緋紅がまた、静かに言った。
「水無の手に触れていいかい?」
緋紅は怖くない。怖くない・・・何度か心の中で繰り返す。
少し息をついて、私はゆっくりと頷いた。
思わず口に出してしまう。
「うん、これを伝えるか迷ったんだけど、やっぱり君を放っておけなくて・・・実は以前、君のお父様から君との関係について、相談を受けていたんだ」
ドキドキドキ・・・心臓の鼓動が激しく乱れる。
父のネットリとした体温、執拗な舌での愛撫、そして、あの日の燃え盛る部屋の中での狂気の表情・・・その全てが一気に頭を駆け巡る。
「父・・・が・・・」
喉がカラカラだった。一体父はなんで緋紅に相談なんか・・・。
「お父さんはね、娘と関係を持ってしまったことを悔いていたんだよ。でも同時に、いろいろなことがうまくいかなくて、そのたった一つの癒しであるとも言って深く悩んでらしたんだ。」
「お父さん・・・」
父もまた悩んでいたとしたら、やっぱり悪いのは私なのではないだろうか。あのとき、父をもっと力いっぱい拒絶していれば、最初の交わりのあと、すぐに誰かに相談していれば・・・。
頭がぐるぐると混乱する。
でも、途中から、私自身も気持ちよくなってはいなかったか?
私の身体は確かにメスの悦びに支配され、自分の欲望から父を誘惑してしまっていたのではないか?
普段考えないようにしていた恐ろしい考えが、私の心の中に黒々と湧き上がってきて止められなくなる。寒くもないのに、身体が小刻みに震えてきてしまう。
その時だった。
「水無、君は悪くない」
きっぱりと緋紅が言った。ハッとして彼の方に目をやる。月明かりに青く頬を染めた陶器のように美しい肌を持つ青年がそこにいた。
その瞳は深い愛情に満ちているように私には感じられた。
「水無、君は・・・悪くない」
もう一度。ゆっくりと、力強く。私の心の奥に届かせようとするかのように。
その言葉に、不意にホロリと、涙がこぼれ落ちた。
「だ・・・って・・・わ、私が、私があんなことをしなければ・・・お父さんは、お父さんは・・・」
いったん溢れだすと、涙を止めることができなくなった。そんな、泣き続ける私のそばに、緋紅はゆっくりと居続けてくれた。
どのくらい泣いていただろうか。私の心が少しだけ落ち着き始めた頃、緋紅がまた、静かに言った。
「水無の手に触れていいかい?」
緋紅は怖くない。怖くない・・・何度か心の中で繰り返す。
少し息をついて、私はゆっくりと頷いた。

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