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天狐あやかし秘譚
第120章 十網九罠(じゅうもうきゅうわ)
上段の間というのだろうか、その少し高くなったスペースの両脇には時代劇に出てくるような行灯が柔らかな光を周囲に漏らしている。左右には襖があり、そこがどんな部屋に続いているのかは見当がつかなかった。
呆然と立ち尽くしてしまっていた私に緋紅が近くによるように言ってきた。恐る恐る近づき、上段の間の前に置かれていた座布団に腰を下ろす。
「ここに入った『家族』は君が初めてだよ・・・水無」
怖いわけではないのだが、馴染みのない雰囲気に私は少し戸惑っていた。どう振る舞うのが正解なのか、よくわからなかった。
「そんな怖がることはないよ。・・・ああ、でもこの距離じゃ話にくいね。・・・うん、こっちにおいで、水無。今日は月がとても綺麗だから」
手を差し伸べられ、私は言われるがままに彼についていく。彼は私から見て左の襖を開き、次の間を抜けていく。そこは縁側のようになっており、見事な庭園が見渡せる心地のいい場所だった。
「座って・・・さあ」
座布団が二枚置かれているので、そのうちの一枚に腰を下ろした。緋紅との距離は30センチほど。秋が深まりつつある夜。清涼な気配があたりに満ちており、虫の声が涼やかな音色を奏でていた。
「あ・・・」
見上げたとき、あまりにも丸く美しい月が目に飛び込んで来たので、思わず声を上げてしまった。そんな私を見て、緋紅がくくっと声を上げて笑う。
「水無は、とても感性が豊かだね」
「え・・・?感性・・・ですか?」
「ふふ、そう固くならないでよ。僕まで緊張しちゃうよ」
『感性が豊か』・・・そんなこと初めて言われた私は、少し居心地が悪いような、くすぐったいような、そんな気持ちになっていた。
風が二つ、そよと過ぎた。
次第に、緋紅との距離に慣れて来ている自分を感じる。
緋紅は父とは違う。私を不当におびやかしたり、勝手に入り込んできたりしない。そんな安心感を覚え始めていた。
「ねえ、水無・・・」
「はい・・・」
「これを言うかどうか迷ったんだけど・・・実は僕、水無が悩んでいること・・・その原因になっていることについて、少し聞いているんだ・・・その・・・お父さんとのこと」
『お父さんとのこと』という言葉に、ドキンと胸が跳ねた。
一体どこから?私はあのことを誰にも言ってなかったはずなのに・・・。
呆然と立ち尽くしてしまっていた私に緋紅が近くによるように言ってきた。恐る恐る近づき、上段の間の前に置かれていた座布団に腰を下ろす。
「ここに入った『家族』は君が初めてだよ・・・水無」
怖いわけではないのだが、馴染みのない雰囲気に私は少し戸惑っていた。どう振る舞うのが正解なのか、よくわからなかった。
「そんな怖がることはないよ。・・・ああ、でもこの距離じゃ話にくいね。・・・うん、こっちにおいで、水無。今日は月がとても綺麗だから」
手を差し伸べられ、私は言われるがままに彼についていく。彼は私から見て左の襖を開き、次の間を抜けていく。そこは縁側のようになっており、見事な庭園が見渡せる心地のいい場所だった。
「座って・・・さあ」
座布団が二枚置かれているので、そのうちの一枚に腰を下ろした。緋紅との距離は30センチほど。秋が深まりつつある夜。清涼な気配があたりに満ちており、虫の声が涼やかな音色を奏でていた。
「あ・・・」
見上げたとき、あまりにも丸く美しい月が目に飛び込んで来たので、思わず声を上げてしまった。そんな私を見て、緋紅がくくっと声を上げて笑う。
「水無は、とても感性が豊かだね」
「え・・・?感性・・・ですか?」
「ふふ、そう固くならないでよ。僕まで緊張しちゃうよ」
『感性が豊か』・・・そんなこと初めて言われた私は、少し居心地が悪いような、くすぐったいような、そんな気持ちになっていた。
風が二つ、そよと過ぎた。
次第に、緋紅との距離に慣れて来ている自分を感じる。
緋紅は父とは違う。私を不当におびやかしたり、勝手に入り込んできたりしない。そんな安心感を覚え始めていた。
「ねえ、水無・・・」
「はい・・・」
「これを言うかどうか迷ったんだけど・・・実は僕、水無が悩んでいること・・・その原因になっていることについて、少し聞いているんだ・・・その・・・お父さんとのこと」
『お父さんとのこと』という言葉に、ドキンと胸が跳ねた。
一体どこから?私はあのことを誰にも言ってなかったはずなのに・・・。

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