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天狐あやかし秘譚
第120章 十網九罠(じゅうもうきゅうわ)
父と母の話を振られて、水有が若干目を伏せる。もちろん、私も父母のことを思い出し、気持ちが沈むのを止めることができない。それでも、この『緋紅』という人のおかげで、どうしていいかわからなかったこれからのことが少しでも見えてきたのは確かだ。
水有の表情が彼から見えないように自分の身体の位置を調整し、私は精一杯の笑顔を緋紅に向けた。
「え・・・ええ・・・。わか・・ったわ」
一応同意の返事をしたけれども、やっぱりなんだかぎこちなかった。そんな私たちに向けて緋紅は少し苦笑いにも見えるような顔をした。
しかし、チンとグラスを合わせる軽い音が響き、緋紅がくいっとグラスの中身を干すと、なんとなく場の雰囲気が和んだ気がした。多分、彼は私たちにかなり気を使ってくれているのだろうなと感じた。
いつの間にか車は山道をクネクネと登っているみたいだった。そして、どこをどう走ったのかわからないままに、立派な作りの門をくぐり、日本家屋の玄関前に停車した。
大男が車の扉を開けてくれる。まずは緋紅が、続いて私たちが降りた。スーツケースに詰められた荷物はやはり大男が取り出して屋敷に運び込んでくれていた。
緋紅についていく形で玄関をくぐると、取次に黒い着物姿の小柄な男がひれ伏して待っていた。
「おかえりなさいませ。緋紅様」
緋紅はその男に一瞥することもなく、靴を脱いで家に上がっていく。
「僕は奥の間に行っているから。まずは君たちの部屋に行って、荷物の整理をするといい。準備ができた頃に人をやるから、茶菓子でも食べながら話をしよう」
小男は緋紅が廊下を曲がって見えなくなってもなお、ピクリとも動かないまま平身低頭の構えを貫いた。彼が顔を上げたのは、緋紅が角を曲がってからたっぷり1分は経った頃だった。
「水無に、水有様でいらっしゃいますね。こちらにお二人のお部屋をご用意しております。」
小男は名を工藤と名乗った。工藤に案内された屋敷の内部は、これまでの私達の生活では見たこともないほどの巨大だった。二階に上がる階段などが見当たらないことから、平屋であるようだが、とにかく部屋数が多かった。
先程のリムジンといい、いよいよ緋紅は私たちとは別世界のお金持ちらしいことが伺えた。
水有の表情が彼から見えないように自分の身体の位置を調整し、私は精一杯の笑顔を緋紅に向けた。
「え・・・ええ・・・。わか・・ったわ」
一応同意の返事をしたけれども、やっぱりなんだかぎこちなかった。そんな私たちに向けて緋紅は少し苦笑いにも見えるような顔をした。
しかし、チンとグラスを合わせる軽い音が響き、緋紅がくいっとグラスの中身を干すと、なんとなく場の雰囲気が和んだ気がした。多分、彼は私たちにかなり気を使ってくれているのだろうなと感じた。
いつの間にか車は山道をクネクネと登っているみたいだった。そして、どこをどう走ったのかわからないままに、立派な作りの門をくぐり、日本家屋の玄関前に停車した。
大男が車の扉を開けてくれる。まずは緋紅が、続いて私たちが降りた。スーツケースに詰められた荷物はやはり大男が取り出して屋敷に運び込んでくれていた。
緋紅についていく形で玄関をくぐると、取次に黒い着物姿の小柄な男がひれ伏して待っていた。
「おかえりなさいませ。緋紅様」
緋紅はその男に一瞥することもなく、靴を脱いで家に上がっていく。
「僕は奥の間に行っているから。まずは君たちの部屋に行って、荷物の整理をするといい。準備ができた頃に人をやるから、茶菓子でも食べながら話をしよう」
小男は緋紅が廊下を曲がって見えなくなってもなお、ピクリとも動かないまま平身低頭の構えを貫いた。彼が顔を上げたのは、緋紅が角を曲がってからたっぷり1分は経った頃だった。
「水無に、水有様でいらっしゃいますね。こちらにお二人のお部屋をご用意しております。」
小男は名を工藤と名乗った。工藤に案内された屋敷の内部は、これまでの私達の生活では見たこともないほどの巨大だった。二階に上がる階段などが見当たらないことから、平屋であるようだが、とにかく部屋数が多かった。
先程のリムジンといい、いよいよ緋紅は私たちとは別世界のお金持ちらしいことが伺えた。

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