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天狐あやかし秘譚
第120章 十網九罠(じゅうもうきゅうわ)
☆☆☆
緋紅と名乗った父の友人は予定通り私たちの身柄を引き取ってくれた。見たこともないような黒塗りの車に乗せられる。

運転手は大柄だけれども、なんとなく目に生気がない感じの人だった。彼のエスコートで、私と水有、そして緋紅は後部座席に座った。

乗り込んでとても驚いた。
この車、最初に見たときから普通の乗用車に比べて車体が長く車幅が広いなと思っていたが、その後部座席はいわゆる普通の車のように2〜3人掛けのシートがあるものではなかったのである。

左側にいろいろなお酒の瓶が置かれた、ミニバーカウンターのようなスペースがあり、右手には2〜3人がゆうゆうと座れるソファが据えられている。そして、最後部にも二人並んで座れるくらいの大きなソファーがあった。内装はシックな木目調で統一されており、若干天井が低いことを除けば、まるでホテルのラウンジのような感じだった。

こんな車、これまでに見たことがなかった。

「リムジンに乗るのは初めてかい?」
戸惑う私たちに、緋紅が柔らかな笑みを向ける。

あまりにも住む世界が違う感じに戸惑い、私は曖昧な笑みを返すことしかできなかった。私より積極的な水有は、物珍しそうにリムジンとやらの内装を見回している。

そんな私たちを乗せて、車は緩やかに走り出す。加速が丁寧なのか、ほとんど揺れらしい揺れを感じない。窓にはスモークが張られており、まだ昼間だというのに、外の景色は宵闇に沈んだように見えた。

緋紅が足つきのグラスにコーラのような飲み物を注いで私たちに渡してくれた。自分は琥珀色のお酒を同じグラスに注いで手に取る。席順は、緋紅が後部の座席に座り、車体右手のソファに私、そして緋紅から一番離れたところに水有という順番で座っていた。

「まずは僕の『屋敷』に来てよ。学校のこととか、生活のこととか、これからのことさ、どうするか少し話し合おう。」

緋紅がグラスを持ち上げ、続けた。

「君たちのお父様やお母様は本当に残念なことをしたけれども、それでも僕は君たちのような素敵な子たちを迎えられて嬉しいと思っているからさ。とりあえず、僕らは擬似的とは言え、親子みたいなもだし・・・新しい関係を祝して、乾杯してもいいかな?」
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