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天狐あやかし秘譚
第119章 電光石火(でんこうせっか)
「ええ、由々しきことです。もし、ダリさんの精神にすら干渉できるとなると、防ぐ手段はほとんどないことになります。そして、もちろん、沖津鏡と対を成すのならば、同じように近づいただけで精神操作が発動すると考えていいでしょうし・・・」

近づいただけで知覚から感覚、思考や行動まで乗っ取られてしまうなんて、そんなのチートすぎる。

そう考えて、ちょっと絶望的な気持ちになったが、でも待てよと思い直した。これまで私が出会った神宝、蜂肩巾、蛇肩巾、生玉、足玉、道返玉、死返玉に八握剣・・・そして、何と言っても品々物之比礼・・・そのどれもが反則級のチート能力ばかりではなかったか。

結局、神宝というものがそういうものなのだと割り切るよりほかないのかもしれない。

「いや、そこまですべからく物事を統べる力があるとは思えない・・・」
ダリが顎に手をやって思案顔をする。その姿を見て、少しドキッとしてしまった。彼のこういう若干憂いを帯びた表情は本当に絵になる・・・なんて、私は思ってしまったのだ。

自分の命がかかってるのに・・・である。

「ええ、それも思います。沖津鏡がダリさんの『死』を確定できなかったみたいに、辺津鏡にもやはり制限はあるみたいです。・・・実際に、ダリさんは行動や思考までは操られてません。」

たしかにそうだ。敵がダリの命を狙ってるなら、近くによって辺津鏡で操ってダリに自殺を命じればいい。それをしなかったということは、できなかったということだ。

「何が制限の要件なのかは不明です。妖力なのか、種族なのか、それともひょっとして寿命とかかもしれません」
「寿命?」
私の頭に疑問符が浮かぶ。妖力が大きい・・・つまり強いから操れないとか、種族が違うからムリ、ならわかるが、寿命って何の関係があるんだろう?

「ええ・・・例えば、敵がダリさんの思考や行動を操りたいと考えたとしましょう。で、辺津鏡は『心の裏を見通し、夢幻に立ち入る』鏡と説明されていました。心の裏・・・すなわち、現代語にすると『心の中』ですね。それを見通して、見通した分だけを操れる・・・みたいな神宝だとしたらどうでしょう?」
「ああ、なるほど!ダリは長生きだから、記憶とか、これまでの行動とか、全部見通しきれない・・・」
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