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天狐あやかし秘譚
第119章 電光石火(でんこうせっか)
☆☆☆
部屋はしんと静まり返っていた。
姉は部屋の片隅に据えられている簡易ベッドの上で小さな寝息を立てている。空にかかる満月が無骨な窓枠に切り取られて、部屋に青い矩形の光を落としていた。その光に照らされた姉の肌は死人のようにも見える。
今、姉は私の持つ神宝・辺津鏡の力で深い眠りについている。辺津鏡は人の心の中を覗き込み、覗き込んだ心を自在に操ることができる神宝だ。
お姉ちゃん・・・なんであれほど私を遠ざけようとするの?
正直言って姉に怒鳴られたのは生まれて初めてだ。姉はいつも私に遠慮がちに接しているイメージしかない。その姉が、あれほど声を荒げるなんて・・・。
以前、姉がひとりで天狐を倒したいと言った時も一度、私は辺津鏡で姉の心を覗いていた。そこに視えたのは天狐を倒し、緋紅様に抱きしめられている姉の恍惚とした表情だった。そこには私の姿はなかった。
『お姉ちゃんは緋紅様を独り占めするつもりだ』
私は姉の心の内を知ることになる。
でも、今日の様子を見て、あれほどの必死さの裏にはもっと違う理由があるのではないかと思ったのだ。
ぼわっと薄赤い光を放つ辺津鏡。そこに映った姉の姿がぐにゃりと歪む。そして、映し出すのだ・・・姉が隠している、心の深い、深い部分を・・・
「何を隠しているのか知らないけれど、お姉ちゃんの心の裏・・・覗いてあげるわ」
私はぺろりと、赤い舌で自身の唇を舐めあげていた。
部屋はしんと静まり返っていた。
姉は部屋の片隅に据えられている簡易ベッドの上で小さな寝息を立てている。空にかかる満月が無骨な窓枠に切り取られて、部屋に青い矩形の光を落としていた。その光に照らされた姉の肌は死人のようにも見える。
今、姉は私の持つ神宝・辺津鏡の力で深い眠りについている。辺津鏡は人の心の中を覗き込み、覗き込んだ心を自在に操ることができる神宝だ。
お姉ちゃん・・・なんであれほど私を遠ざけようとするの?
正直言って姉に怒鳴られたのは生まれて初めてだ。姉はいつも私に遠慮がちに接しているイメージしかない。その姉が、あれほど声を荒げるなんて・・・。
以前、姉がひとりで天狐を倒したいと言った時も一度、私は辺津鏡で姉の心を覗いていた。そこに視えたのは天狐を倒し、緋紅様に抱きしめられている姉の恍惚とした表情だった。そこには私の姿はなかった。
『お姉ちゃんは緋紅様を独り占めするつもりだ』
私は姉の心の内を知ることになる。
でも、今日の様子を見て、あれほどの必死さの裏にはもっと違う理由があるのではないかと思ったのだ。
ぼわっと薄赤い光を放つ辺津鏡。そこに映った姉の姿がぐにゃりと歪む。そして、映し出すのだ・・・姉が隠している、心の深い、深い部分を・・・
「何を隠しているのか知らないけれど、お姉ちゃんの心の裏・・・覗いてあげるわ」
私はぺろりと、赤い舌で自身の唇を舐めあげていた。

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