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天狐あやかし秘譚
第119章 電光石火(でんこうせっか)
☆☆☆
ふわりと、ダリが京都支部の建物にある二階バルコニーに降り立つ。小脇にはぐったりとしている宝生前を抱え込んでいた。心配でずっと待機していた私は、ダリに駆け寄った。

「ダリ・・・!大丈夫だった?」
「ああ」

ダリの手によって運ばれてきた宝生前は京都支部の祭部衆の手によって、すぐに処置室に運び込まれた。御池によればそこで専門家によって呪的、霊的汚染を徹底的に調べるのだという。

「御九里さんは・・・?」
私が聞くと、ダリが首を振った。
「済まない。御九里は操られたまま連れ去られた・・・そして、沖津鏡も、その巫女も取り逃がしてしまった」

ギュッと唇を噛む表情は悔しそうだった。

ダリによると、敵はやはり御九里や宝生前を操っていたらしい。しかも、自殺をさせることもできるのだというから、ダリがうっかり手を出せなかったのも頷ける。

「最後、我に声をかけたのは、あの予言の鏡を使う巫女と同じ声だった・・・やはりキヌギヌという術者が近くにいたのは間違いないだろう」

今回の御九里や宝生前の拉致や洗脳は敵方の持つもうひとつの神宝・辺津鏡の能力であることは確定的になったわけだ。高森が言っていた辺津鏡の『心の裏を見通し、夢幻に立ち入る』という能力の少なくとも一端は一種の洗脳能力だということが分かった。

「もしかしたら、辺津鏡の力は単純に相手を催眠状態にしてコントロールするとか、そういうことだけではないかもしれないですね」
御池が言った。
「え?なんで?」
「ダリさんの話によると、スクセが御九里によって森の奥に運ばれた後、術者であるキヌギヌの姿が見えなかったのに、声だけが聞こえたんですよね?」
「ああ」
「そこから考えると、辺津鏡は考え方とか行動だけじゃなくて、知覚とか感覚とか、そういうものにも干渉できる・・・つまりは人やあやかしの精神機能全般に作用する力を持っているのではないかというのが、今、私が考えている仮説です」
「そんな・・・」

それがもし本当なら、敵が視えなかったということはすなわち、神宝の力が『ダリの精神をも操った』ことを意味する。
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