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天狐あやかし秘譚
第119章 電光石火(でんこうせっか)
発する呪力が球状に膨らみ、周囲の木々をなぎ倒す。そこに現れたのは愛用の剣・鬼丸国綱改(おにまるくにつなあらため)を顔の前にかざすように構えていた。

「東方青帝土公、南方赤帝土公、西方白帝土公、北方黒帝土公
 赤門より再拝せよ
 霊光剣戟 急急如律令!」

御九里が足を踏み込み、退魔の霊光をまとった剣をダリに叩きつける。

同時に宝生前の呪言が完成しようとする。
彼が唱えているのは、結界内部に閉じ込められた『永遠』をその身に秘めるあやかしに、土の術が持つ『変化』のコードを強制的に叩き込む土公の退魔術式だった。

「四神霊光檄!」
「黄龍滅殺陣!」

二人の術式が一息にダリに襲いかかる。

そして、攻撃はこれだけではなかった。ダリが宝生前や御九里に目を奪われた隙に気を練っていたスクセが持つ八握剣は、今やその刀身を天を衝くほどに巨大化させていた。
スクセが渾身の力でそれを振り下ろす。

ーひとつひとつは生起確率の大きい出来事だったとしても・・・
 積み上げれば小さな確率事象につなげることができる。
 たとえ、直接お前の運命に『死』を書き込めなくても・・・これなら!

「・・・死ねぇっ!天狐ぉ!!」

御九里の術式、宝生前の術式、そして、スクセの持つ神宝の力が空間の一点めがけて重なり合う。その膨大な力は、時空すら焼き切り、天狐の神の力をも凌駕する。

オレンジの光が一点に収束し、刹那、爆発的な力を伴って弾ける。

どごおおおおおおんっ!!

まるで太陽が落ちてきたかのような莫大な光の奔流が暮れなずむ山を鮮烈に照らし出す。そして、すぐに猛烈な熱波が御九里、宝生前、そしてスクセを襲い、彼らを数メートル弾き飛ばした。ダリが立っていた地面を中心に山を揺るがすほどの鳴動が走る。

10秒ほどすると、光が収束し辺りに静けさが戻った。スクセは術の反動で痛む頭を振りながら、ゆっくりと体を起こした。

目の前には直径10メートル以上に渡って地面が深くえぐれていた。それはその中心のほんの一点に莫大な力が注ぎ込まれたことを意味する。

そして、穴の中心には一片の人影すらなかった。

「や・・・った・・・の・・・?」

痛っつっ!
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