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天狐あやかし秘譚
第119章 電光石火(でんこうせっか)
ダリはヒュンヒュンと槍を左右に振り回すと、すっと中段に構える。まずは八握剣を攻略する・・・そう考えたようだった。

ー天狐ダリ・・・

ダリと対している女・・・スクセはそれを見て考える。手に持っている八握剣に己の生命エネルギーがガリガリと削られていくのを実感する。スクセは八握剣の適合者では『ない』。適合者であってもある程度、命が削られるというのだから、適合者でないならなおさらだ。ましてや地形を変えうるほどの力を持つこの八握剣の『四段目』・・・今のスクセがこの神宝から引き出せるマックスに近い出力である。

ー長くはもたない

それはスクセが一番わかっていることだった。
それでも、彼女に焦りはなかった。なぜなら、ここまでの立ち回りは全て彼女がすでに『視て』、『固めて』いた未来そのものだったからだ。

ーあなた達は天狐の未来を固められないと思ったでしょう?
ーでもそれは違うのよ・・・。
ー私の神宝・沖津鏡はどんな未来でも視ることさえできれば固めることができる。
ーでもそれは、確率に左右されるの。
ー確率の高い未来ほど小さな力で固められるけど、確率の低いことを固めるには多大な『命』が必要・・・。

それだけの違いだから・・・っ!

「お前が今、その場で立ち止まることは・・・すでに固めてあった!」

その言葉にダリがハッとした表情を見せる。

「歳破神 傷門を開き 南坐せよ」
茂みの向こう、薄闇の陰から、呪言を唱える声がする。その声に応え、ダリが立ち止まった地面に五芒の形に突き刺された石釘が鈍い黄色の光を放ち、円筒形の結界を張り巡らしダリをその中に捕らえた。

「何!?」

闇の中から姿を現したのは胸の前で刀印を結んだスーツ姿の陰陽師、宝生前だった。

「土公捕縛界」

だが、その目は生気を宿しておらず、口にした呪言も機械的なものだった。いつもの宝生前を知るダリからすると、その違いは明白だ。それでも術の威力は本物だった。

宝生前はすぐに次の呪言を口にする。それとともにダリ右斜め背後からも呪言が響いてきた。

「天地開闢 四神天帝を奉る
 霊光、星辰、日形、月形、極みて退けよ・・・」

結界に囚われたダリは顔をそちらに向けることはできない。しかし、その声には聞き覚えがあった。背後に膨大な呪力が立ち上っていく。

「御九里か!?」
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