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天狐あやかし秘譚
第118章 一落千丈(いちらくせんじょう)
この鏡がすべての元凶ではないかと思っていたからだ。その意味では、たとえ藤塚の家に代々伝わる宝だったとしても、売り払ってしまうのが正解ではないかと思ったのだ。
そうは言っても、未成年の身で古物売買などできようはずがない。結局、この二枚の鏡は私たちに与えられたロッカーの奥深くにしまわれたままになってしまう。
「ねえ、お姉ちゃん・・・これから私たちどうしたらいいんだろう?」
水有が膝を抱えて言った。
壁にもたれたまま、私は水有のことを見る。
寂しそうにしている水有・・・。私も寂しい。ほんの1年前まではジジもいた、ババもいた、母もお父さんもいた。なのに、今私たちの周りには誰もいなくなってしまったのだ。
「ごめんね、水有・・・」
そんな言葉が自然と口をついて出る。
「どうしてお姉ちゃんが謝るの?・・・悪いの父さんじゃん」
水有も、父が家族を惨殺したことを聞かされていた。水有の目から見たら、お父さんが諸悪の根源に見えるのは当然だった。
このとき、全てを水有に白状しなくては、という気持ちが湧いた。でも、それをする勇気がなかったのだ。
これで、水有まで失ったら・・・
その不安が私の口を固くつぐませることになる。
「う・・・うん・・・。なんか、うまくやればお父さんとお母さんを仲直りさせられたんじゃないかって」
なので、こんなふうに曖昧に濁してしまった。
こんなふうに施設の中でもんもんとした生活をしていたある日、この後の私たちの運命を決定的に方向づける出会いがあった。
「藤塚さんたち、ちょっと応接室まで来て」
養護施設の職員のひとり、水田さんが声をかけてきた。
なんだろうと思って水有と行くと、応接室のソファに何処かで見たような後ろ姿の人が座っていた。その人の向かいには施設長の先生、蒲田さんがいた。
「こちら、神内さんとおっしゃるそうです。藤塚さんたちのお父様のご友人だそうです」
はあ・・・。
そんな間の抜けた声が私の口から出た。蒲田先生に招かれて私たちもソファに腰を下ろした。
「はじめまして・・・かな?
お父様とは懇意にさせていただいていました」
水有はピンとこなかったみたいだけれども、私はその声に聞き覚えがあった。この声は、あの日、ジジとお父さんと『おばけの間』で話をしていた父の友人・・・その声と同じだった。
そうは言っても、未成年の身で古物売買などできようはずがない。結局、この二枚の鏡は私たちに与えられたロッカーの奥深くにしまわれたままになってしまう。
「ねえ、お姉ちゃん・・・これから私たちどうしたらいいんだろう?」
水有が膝を抱えて言った。
壁にもたれたまま、私は水有のことを見る。
寂しそうにしている水有・・・。私も寂しい。ほんの1年前まではジジもいた、ババもいた、母もお父さんもいた。なのに、今私たちの周りには誰もいなくなってしまったのだ。
「ごめんね、水有・・・」
そんな言葉が自然と口をついて出る。
「どうしてお姉ちゃんが謝るの?・・・悪いの父さんじゃん」
水有も、父が家族を惨殺したことを聞かされていた。水有の目から見たら、お父さんが諸悪の根源に見えるのは当然だった。
このとき、全てを水有に白状しなくては、という気持ちが湧いた。でも、それをする勇気がなかったのだ。
これで、水有まで失ったら・・・
その不安が私の口を固くつぐませることになる。
「う・・・うん・・・。なんか、うまくやればお父さんとお母さんを仲直りさせられたんじゃないかって」
なので、こんなふうに曖昧に濁してしまった。
こんなふうに施設の中でもんもんとした生活をしていたある日、この後の私たちの運命を決定的に方向づける出会いがあった。
「藤塚さんたち、ちょっと応接室まで来て」
養護施設の職員のひとり、水田さんが声をかけてきた。
なんだろうと思って水有と行くと、応接室のソファに何処かで見たような後ろ姿の人が座っていた。その人の向かいには施設長の先生、蒲田さんがいた。
「こちら、神内さんとおっしゃるそうです。藤塚さんたちのお父様のご友人だそうです」
はあ・・・。
そんな間の抜けた声が私の口から出た。蒲田先生に招かれて私たちもソファに腰を下ろした。
「はじめまして・・・かな?
お父様とは懇意にさせていただいていました」
水有はピンとこなかったみたいだけれども、私はその声に聞き覚えがあった。この声は、あの日、ジジとお父さんと『おばけの間』で話をしていた父の友人・・・その声と同じだった。

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