この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第118章 一落千丈(いちらくせんじょう)
嘘だ!
『謝りたい』って言ったのに・・・
『済まなかった』って言っていたのに・・・

思い出す。あの鏡の中からあふれかえる青い光。
その向こうに見えた光景。

赤くチラチラと燃え盛る部屋の中・・・父が、母を・・・

心臓がドキドキと早鐘のように打つ。
息がうまく吸えない。頭が締め付けられるように苦しい。

嘘だ、嘘だ、嘘だ!

家族旅行をしたときの父の笑顔、
模擬試験の結果が思うようでなかったときの母の困ったような顔、
仕事に行くときの父の後ろ姿、
熱を出した私に優しく添えられた母の優しい手のひら・・・

煙を吸い込む事を気にしているゆとりはもうなかった。
立ち上がり、息を止めて走り出す。
母の部屋を開けたがそこには煙が満ちているだけで誰もいなかった。

そうだ・・・鏡の中の部屋はもう、燃え盛っていた。
ということは・・・

火がチラチラと見えている奥の間・・・
そうだ『おばけの間』!

私は踵を返しておばけの間を目指す。進むに連れ、ますます煙が濃度を増し、明らかに火元が近くなっていることを示唆していた。

「お母さん!」

おばけの間の襖を開くと、床の間を中心に火の手が上がっていた。そして、そこには・・・

「水無!逃げなさい!!」
母がこちらに向かって手を伸ばしている。伸ばしている手の反対側を握っているのは父だった。父の足元にはおじさんがぐったりと横たわっている。ババと同じだった。胸元から血が流れ出しており、ひと目見て息絶えていることが分かった。

「水無・・・水無!・・・来てくれたんだね・・・。父さんと行こう」
「やめて!あなた!水無!逃げなさい!!」

母が握られた手を振りほどこうと思いっきり振り回す。しかし、父はそれを決して離さず、母の方に目をやった。

「お前が・・・お前が私と水無の仲を引き裂こうとするから!」

母に向けた顔、揺れる炎に照らし出されたのは、まさにあの日に見た鬼の形相だった。

ズブリ・・・

それは、あまりにもあっけなかった。右手に握った血に塗れた包丁が、母の胸に沈み込む。母は一瞬目を大きく見開くと、そのまま音もなく崩れ落ちていった。

「さあ・・・、水無・・・父さんと行こう・・・」
/1728ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ