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天狐あやかし秘譚
第118章 一落千丈(いちらくせんじょう)
☆☆☆
最初に気づいた違和感は『熱さ』だった。秋が近くなり、京都も夜は過ごしやすくなっていた。なのに、汗をかくほどの暑さを感じたのだ。
目を開けようとしたが、何かが目に沁みて目を開けることができなかった。涙が溢れてくる目をこすりながら身体を起こすと、喉に刺激があり、ゴホゴホと咳込んでしまう。
何?一体何!?
水有は?ととっさに思い、横を見ると、水有もまた身体を起こして咳込んでいた。そこで初めて、私は部屋に煙と異臭が満ちていることに気づく。
「ごほっ!ごほ・・・ごほっ!・・・お、お姉ちゃん!」
「水有!」
枕元に準備してあった着替え、そこに重ねていたハンカチで口と鼻を覆う。そうすると少しマシになった。この熱さと煙・・・臭い・・・まさか!?
「水有もハンカチを・・・火事よ!」
水有を逃さなければいけない。私たちの部屋は一階だ。窓を開ければ庭に出られる。窓を開け、そこからまず水有を逃がした。
「お姉ちゃんも!」
水有が手を伸ばしてくるが、私は母のことが心配になった。窓から外を見た限りで母の姿はない。
「お母さん連れてくるから!水有は消防車を呼んで!」
襖を開けると廊下には部屋よりも多くの煙が満ちていた。学校で習ったこと・・・火事の時は身をかがめて煙を吸い込まないように、を思い出し、身を低くする。母の寝室は私たちの部屋から少し離れている。そこに進もうとしてたとき、廊下の途中に人影が倒れているように見えた。
お母さん!?
びっくりして駆け寄ったが、そこに倒れていたのは母ではなかった。
「そんな・・・ババ・・・」
うつ伏せに倒れていたのはババだった。慌てて抱き起こそうとすると、手にぬるりとした感触がある。廊下の向こうにチラチラと火が見える。その火の光に照らされた手がベッタリとなにかで濡れているのが分かった。
それが血だということがはっきりするのに、さほどの時間はかからなかった。
ぐったりしたババの身体、胸元から流れる大量の血・・・
死んでる・・・?
「ひっ!」
引きつるような悲鳴が口をつく。足が震え、力が入らなくなる。
お母さんは・・・?
母のことがますます心配になった。警報のようなワンワンという音が頭の中にこだましていた。
最初に気づいた違和感は『熱さ』だった。秋が近くなり、京都も夜は過ごしやすくなっていた。なのに、汗をかくほどの暑さを感じたのだ。
目を開けようとしたが、何かが目に沁みて目を開けることができなかった。涙が溢れてくる目をこすりながら身体を起こすと、喉に刺激があり、ゴホゴホと咳込んでしまう。
何?一体何!?
水有は?ととっさに思い、横を見ると、水有もまた身体を起こして咳込んでいた。そこで初めて、私は部屋に煙と異臭が満ちていることに気づく。
「ごほっ!ごほ・・・ごほっ!・・・お、お姉ちゃん!」
「水有!」
枕元に準備してあった着替え、そこに重ねていたハンカチで口と鼻を覆う。そうすると少しマシになった。この熱さと煙・・・臭い・・・まさか!?
「水有もハンカチを・・・火事よ!」
水有を逃さなければいけない。私たちの部屋は一階だ。窓を開ければ庭に出られる。窓を開け、そこからまず水有を逃がした。
「お姉ちゃんも!」
水有が手を伸ばしてくるが、私は母のことが心配になった。窓から外を見た限りで母の姿はない。
「お母さん連れてくるから!水有は消防車を呼んで!」
襖を開けると廊下には部屋よりも多くの煙が満ちていた。学校で習ったこと・・・火事の時は身をかがめて煙を吸い込まないように、を思い出し、身を低くする。母の寝室は私たちの部屋から少し離れている。そこに進もうとしてたとき、廊下の途中に人影が倒れているように見えた。
お母さん!?
びっくりして駆け寄ったが、そこに倒れていたのは母ではなかった。
「そんな・・・ババ・・・」
うつ伏せに倒れていたのはババだった。慌てて抱き起こそうとすると、手にぬるりとした感触がある。廊下の向こうにチラチラと火が見える。その火の光に照らされた手がベッタリとなにかで濡れているのが分かった。
それが血だということがはっきりするのに、さほどの時間はかからなかった。
ぐったりしたババの身体、胸元から流れる大量の血・・・
死んでる・・・?
「ひっ!」
引きつるような悲鳴が口をつく。足が震え、力が入らなくなる。
お母さんは・・・?
母のことがますます心配になった。警報のようなワンワンという音が頭の中にこだましていた。

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