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天狐あやかし秘譚
第118章 一落千丈(いちらくせんじょう)
☆☆☆
目が覚めたら、私は布団に寝かされていた。そばには氷が浮かんだ洗面器とタオルがある。頭がズクズクと痛む。全身がボワッとした感じがしてて、目もなんだか潤んでいるみたいだった。

「あ・・・」

声がした方向を見たら、水有がいた。水有は慌てて部屋を飛び出していく。廊下の向こうで『おねーちゃんが起きた』と言っている声が聞こえた。

ぱたぱたと音がして、母が襖から顔をのぞかせた。その表情に強い憔悴の色を認めたのはきっと気のせいではなかったと思う。

「水無・・・熱は大丈夫?」

さっきの母の言葉が頭にこびりついてはいたけれども、それでも母がかけてくれたのは、いつもの優しい言葉だった。

熱?

言われて気づいた。そうか、さっきから悪寒がすると思ったのは、私、熱を出していたのか・・・と。

ちょっと測ってご覧なさいと言われて、体温計を脇に挟んでみたら、熱は38度を超えていた。母が冷たい手を私の額に載せてくる。

「色々あったから混乱してるかもしれないけど、とにかく今は寝なさい」
「水有、あなたはこっちきてお夕飯の支度の手伝いよ」
「え〜〜」

水有が不満そうな声を出して部屋を出ると、パタリと部屋は静かになった。

色々考えなければいけないことはあると思ったが、頭がぼんやりしてよく考えられなかった。その後、水有がおかゆを持ってきてくれて、それを食べたら眠くなってしまい、私は再び深い眠りについた。

結局、私の熱は3日間ほど続くことになった。

母はどうやら当面の生活費を父の実家から借り受けようとしていたらしいことは分かってきた。その目処がつき、次に住むところを探そうとしているみたいだった。水有は母に連れられてあちこち歩かされたと不満を述べていた。

不動産屋さん、役所、ドラッグストアやデパートなどにもつれてかれたらしい。

「もう!大変だったよ!」
水有がこぼす。色々行くところがあるのは仕方がないと思う。着の身着のままで出てきたようなものだったからだ。荷物をお父さんに送るように要請するとは言っていたが、それでも当面の間の着替えとか生理用品とか、そういった細々したものが必要だったりするのだ。

「なんでお母さん、急にお父さんと別れるって言い出したんだろう?」
ポツリと言った水有の言葉にドキリとした。
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