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天狐あやかし秘譚
第111章 真実無妄(しんじつむもう)
ついに僕の手が和羽の腕を捉える。そのまま全体重をかけて強引に引き倒した。
幸運なことにノーマルサイズに近い和羽の身体は、今の僕の力でも引き倒すことができた。だけど、その後がいけなかった。引き倒された和羽はすぐさま体をひねると、僕の腹を強烈に蹴り上げてきた。

「ぐはっ!」

その衝撃で僕の身体は浮き上がり、2メートルほどすっ飛んでしまった。

痛ってぇ・・・

どうやら和羽の方も無理な態勢だったようだ。力がそれほど乗っていなくて助かったかもしれない。骨などは折れてなかった。

だが、さすがは鬼の力。中途半端な蹴りであっても相当な威力だった。一瞬、僕は呼吸ができなくなり、その動きを止めざるを得なくなる。

その隙を和羽は見逃さなかった。
素早く立ち上がった彼女は地面を蹴りつけ、そのタフなバネを活かして膝蹴りを仕掛けてくる。僕はなんとかそれを横跳びにして避けたものの、すぐさま方向転換してきた和羽が、今度は鋭い爪を振り下ろしてくる。

呼吸を整える暇もない・・・。

僕は、和羽が左右の腕で繰り出してくる猛攻を、もつれそうになる足にむち打ちながら、なんとか躱していく。サイズが小さいとは言え、鬼の力である。かすっただけでも致命傷になりかねない。

背後なので見えないが、不知火の君の方も興長との戦いに苦戦しているようだ。
僕が直接指揮を執ることができればもう少しまともな戦いができるかもしれないが、今の彼はいわば『自動運転』モードだ。どうしても攻撃が単調になり、読まれやすくなる。

しかも、今、不知火の君に与えられている至上命令は『色麻さんを守る』ことだ。
興長を倒して、こちらを支援するところまで力が及ぶとは思えない。

自力でなんとかするしかない。

「ハハハっ!あの拳銃がなければ何もできないみたいね!
 さっさと倒れなさいよ!」

これだけの連続攻撃を繰り出しながら、息ひとつ乱さないのはさすが鬼のタフネスだ。一方こちらは確実に体力を奪われていく。

このままじゃジリ貧。
なんとかしなければ・・・。

「ほらほら、だんだんガードが甘くなってきてるわよ。
 ・・・これで、どうだ!」

グルンと僕の目の前で和羽が身体を回転させる。
背中が見えたと思った瞬間、後ろ足で蹴り上げるような鋭い蹴りが僕の喉を正確に捉えてくる。
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