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天狐あやかし秘譚
第111章 真実無妄(しんじつむもう)
「西園寺様!」
ちょっと後にしてくださいよ!

興長の目的が何かはわからないけど、冥穴が開けばこの辺一体は大騒ぎになる。ついでにその時には僕らも殺されてしまって・・・

「西園寺様ってば!」
「いだっ!!」

ガブッと色麻さんが僕の太ももに噛みついてきた。

「な・・・何するんですか!?」
「聞いてください!私の話を!」
「だからって噛みつくことないじゃないですか!」
「私、勧請符を持ってるんです!」

はい?

僕は耳を疑った。勧請符とは式神を勧請・・・つまり呼び出すための符である。
だけど・・・

「色麻さん、式神持ってないじゃないですか!」
「私のじゃないです。西園寺様のです」

What's?
なんで色麻さんが僕の勧請符を持っているの!?

通常、勧請符はその家に伝わる秘伝・・・言ってみれば門外不出の秘儀である。もちろん僕も自身の勧請符は厳密に管理していたし、同僚であってもその作り方について話したことなどない。

それをなぜ色麻さんが持ってるのだろうか?

「いや・・・その、あの・・・ちょ、きょ、興味があって・・・」

なんだかしどろもどろで要領を得ない。ついでに言えば、なんとなく耳が赤くなっているようだが・・・?

まあ、どうしてとかは後でじっくり突き詰めればいい。
もし、本当に式神を呼び出すことができればこの窮地から脱する可能性が出てくる。

「どこに持ってるの?」
「パンツの右ポケットに・・・」

今日の色麻さんは動きやすさを重視したのだろうか、上はTシャツ、下はテーパードパンツというスタイルである。確かに、サイドにはポケットが付いている。

僕は身体をズリズリと這わせて、彼女のパンツの辺りに顔を持っていく。
動きにくいので、もうこの時点でものすごく激しい運動をしたような感じになる。
はあ、はあ、と息が切れていた。

「ちょ・・・西園寺様、ふとももに顔を押し付けないでください!」
「しょ、しょうがないだろ・・・」
「いや・・・息が生暖かくて・・・ちょ・・・まっ!」
もぞりと色麻さんの身体が動いてしまう。せっかくポケット近くまで顔を持ってきたのに、またずるっと落ちてしまった。

「ちょっと我慢してくださいよ」
ずりっと身体を引き上げ、近づけたタイミングと、彼女が身体を戻したタイミングが一致してしまって、今度は行き過ぎてしまった。
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