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天狐あやかし秘譚
第111章 真実無妄(しんじつむもう)
「不用意に動かないでください・・・興長さんの方も、両腕の腱を撃ち抜きましたからね、しばらくは身動き取れないでしょう。あなたも人型に戻って大人しく縛についてくれると楽なんですが?」

異形の鬼が歯噛みをする。そして、とうとう観念したのか、だらりと腕を落とすと、鬼気を収め始めた。その身体が少しずつ縮んでいく。

「良かった・・・分かっていただけて僕も嬉しいです。
 僕は結界術や縛鎖術は得意ではないんです。
 あなたに暴れられたら・・・殺すしかなかったですから。」

西園寺がホッとしたように笑った。

「良かった?ええ・・・本当に良かったわ。
 あなたが優しくて・・・」

和羽の身体は2メートルほどまで縮んでいた。
その腕も足も人間の女性のそれに近いサイズになりつつあった。
 
「・・・甘ちゃんで!!」

興長!!

和羽が顔を上げて叫ぶ。一瞬、状況が読めず、西園寺の判断が遅れた。
そこに意外なところから女性の悲鳴が上がる。

「きゃあっ!」
「武器を捨てろ!」
見ると興長が誰かを抱きかかえ、その首筋に短刀を突きつけている。闇に紛れてよく見えないが、その声には聞き覚えがあった。

「な・・・なんで君が!?」
その様子を見て和羽がニヤリと笑う。

「形勢逆転ね・・・言ったでしょ?
 状況に応じて柔軟に対応するための準備が必要って」

興長に盾にされるように捕まってしまっていたのは・・・色麻樹里だった。
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