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天狐あやかし秘譚
第111章 真実無妄(しんじつむもう)
大武丸の掛け声に、悪鬼たちの強襲が勢いを増す。それでも西園寺は冷静に、襲い来る悪鬼をスウェイバックで躱し、足を軸に体を回転させ、ときに体術を織り交ぜながら引き金を引き続ける。銃弾は正確に邪鬼の眉間を貫き、貫かれた鬼は醜い悲鳴を上げてのけぞり、息絶えていく。

鏖殺は、30秒ほどで終わった。

まだ闇に溶けきれない邪鬼の死骸の中央で2丁の拳銃を持った腕をだらりと垂らしたまま、西園寺は佇んでいる。

「今の神器の弾は僕の呪力です・・・。弾切れはありません。」

左手の拳銃の照準を、再び和羽にピタリと合わせる。

「あなたの力では僕は倒せません・・・投降してください。」
その言葉にぎりりっと和羽が歯噛みをした。

だが、敵も何もしてなかったわけではなかった。西園寺が邪鬼と戦っている間、もうひとりの男が闇にまぎれてその位置を変えていたのだ。ちょうど、西園寺から見て和羽を12時の方向とすれば、3時の方向に移動していたのだ。そして、西園寺の注意がその和羽に注がれたと見たとき、暗闇の中の男が動いた。

その両の手で印を結び、呪言を唱えようとしたのだ。
しかし・・・

パン!

その手が数ミリも上がらない内に、あっという間に両肩を撃ち抜かれてしまう。和羽が驚いて見ると、つい数秒前まではだらりと下に垂らされていた右手が正確に男のいる方に向けられていた。

視線は和羽に向けられたままにも関わらずだ。

「ぐうっ!」
「興長!」
和羽がその名を呼んだ。
短い悲鳴を上げた興長は肩に感じた灼熱の痛みに顔を歪め、そのまま膝をついた。

「あなたですね。あの時、霧を出したのは・・・興長・・・そうか、時弥の秘書・・・さっきの会話からして、あなたなにか知ってますね・・・いやむしろ、あなたが黒幕・・・?」

興長を一瞥もすることなく言うと、西園寺はゆっくりと左手の雷炮神器の引き金にかけた指に力を入れる。

「和羽さん・・・まだ、やりますか?
 僕としてはたとえ鬼だとしても、女性に銃弾を浴びせるのは趣味じゃないんですが・・・」

ジリっと和羽が歩を進めようとすると、破裂音とともに、その足の数センチ先に銃弾が突き刺さった。
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