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天狐あやかし秘譚
第110章 機略縦横(きりゃくじゅうおう)
異形の鬼が咆哮する。内部に溜め込まれた鬼気が一気に周辺に解き放たれた。バチン、バチンバチンと残りの祭壇もすべて弾け飛び、その衝撃は依代が横たわるベッドをも吹き飛ばす。
「きゃああ!」
「ぐわっ!」
その凄まじい陰気の奔流に、西園寺も色麻もたまらず顔を覆い、後ずさった。
そして、とっさに西園寺は色麻をかばうように動く。
しかし、これが悪手だった。
バリン!
窓ガラスが割れる音が響く。
次いで、鬼気を縫って夜気が頬を撫でる。
「しまった!」
西園寺が気づいたときには遅かった。
時弥は窓ガラスを破って外に飛び出していた。
慌てて雷炮神器を構え、割れた窓に駆け寄ったが、時弥はすでに漆黒の獣のような猛スピードで道路に向かって走り去ろうとしているところだった。
「追わなきゃ!」
踵を返し、廊下に出ようとする色麻に、西園寺が静かに言った。
「いや、いいよ、色麻さん・・・」
「なんで!?」
西園寺の目は、ある一点に釘付けになっていた。
鬼と化した時弥が走り去ろうとする、その先にひとつの影が立ちふさがっていた。
上空の雲が途切れる。
空には満月に近い待宵月。
その光に照らされて姿を現したのは・・・
「吾嬬さん・・・」
時弥の前に立ちふさがっていたのは、朔弥の秘書である吾嬬千鶴だった。
吾嬬がメガネを取り去った。細めた目が紅い光を放つ。
ブワリ
瞬間、100メートル以上離れているはずの西園寺にすらわかるほどの呪力が、そこから溢れ出すのが分かった。
「なんだ!てめぇは!」
時弥がその丸太のように太い腕を振りかぶり、吾嬬に襲いかかろうとした。
「吾嬬さん!!」
焦った色麻は窓に取りついて叫ぶが、西園寺の方は至って落ち着いていた。
まるで値踏みをするかのように、冷ややかな目で吾嬬と時弥の方を見つめていた。
ガハッ!
「え?」
色麻があっけにとられた声をあげる。
何が起こったかわからなかったのだ。
色麻が捉えたのは、鬼となった時弥が吾嬬に襲いかかろうとしたのに、そこに至る手前、数メートルのところで、突然、彼が膝から崩れ落ちた光景だった。
「何・・・何がどうなってるの?」
色麻からは吾嬬は微動だにしていないようにしか見えなかった。
しかし、戦闘慣れした西園寺には別の光景が見えていた。
「きゃああ!」
「ぐわっ!」
その凄まじい陰気の奔流に、西園寺も色麻もたまらず顔を覆い、後ずさった。
そして、とっさに西園寺は色麻をかばうように動く。
しかし、これが悪手だった。
バリン!
窓ガラスが割れる音が響く。
次いで、鬼気を縫って夜気が頬を撫でる。
「しまった!」
西園寺が気づいたときには遅かった。
時弥は窓ガラスを破って外に飛び出していた。
慌てて雷炮神器を構え、割れた窓に駆け寄ったが、時弥はすでに漆黒の獣のような猛スピードで道路に向かって走り去ろうとしているところだった。
「追わなきゃ!」
踵を返し、廊下に出ようとする色麻に、西園寺が静かに言った。
「いや、いいよ、色麻さん・・・」
「なんで!?」
西園寺の目は、ある一点に釘付けになっていた。
鬼と化した時弥が走り去ろうとする、その先にひとつの影が立ちふさがっていた。
上空の雲が途切れる。
空には満月に近い待宵月。
その光に照らされて姿を現したのは・・・
「吾嬬さん・・・」
時弥の前に立ちふさがっていたのは、朔弥の秘書である吾嬬千鶴だった。
吾嬬がメガネを取り去った。細めた目が紅い光を放つ。
ブワリ
瞬間、100メートル以上離れているはずの西園寺にすらわかるほどの呪力が、そこから溢れ出すのが分かった。
「なんだ!てめぇは!」
時弥がその丸太のように太い腕を振りかぶり、吾嬬に襲いかかろうとした。
「吾嬬さん!!」
焦った色麻は窓に取りついて叫ぶが、西園寺の方は至って落ち着いていた。
まるで値踏みをするかのように、冷ややかな目で吾嬬と時弥の方を見つめていた。
ガハッ!
「え?」
色麻があっけにとられた声をあげる。
何が起こったかわからなかったのだ。
色麻が捉えたのは、鬼となった時弥が吾嬬に襲いかかろうとしたのに、そこに至る手前、数メートルのところで、突然、彼が膝から崩れ落ちた光景だった。
「何・・・何がどうなってるの?」
色麻からは吾嬬は微動だにしていないようにしか見えなかった。
しかし、戦闘慣れした西園寺には別の光景が見えていた。

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