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天狐あやかし秘譚
第109章 青天霹靂(せいてんへきれき)
☆☆☆
まず私達が訪れたのは、大武家の三男、時弥が使っている執務室だった。今日も秘書の興長は休暇を取っているということで、もう一人の秘書である鈴本が私達を案内してくれた。

「社長代理は今オンラインでの会議中です。あと20分ほどで終わる予定ですので、少々お待ちください。」

通されたのは、他の兄弟が利用しているのと同じフロア。役員たちが詰めているセクションである。それぞれの役員室に専用の会議室兼応接室があるようで、朔弥と面会したのとはまた別の部屋だった。

「随分とこう・・・成金というか・・・」
思わず率直な感想が漏れてしまう。
先日訪れた朔弥の使っていた応接室が『シックで実用的』だとすれば、時弥のそれは『派手で成金趣味』だった。左右の壁にはこれでもかと言うほどのお高そうな絵画や壺、塑像などが飾り付けられている。その統一感のなさがなおさら成金感を強めていた。

秘書の鈴本も、秘書にしては若干化粧が派手だし、胸元が開きすぎな気がする。あれも時弥の趣味なのかもしれない。

もしかしたら、こっちも愛人だったりして?

いや、そう言えば朔弥と違い、時弥は独身だった。鈴本の手にも結婚指輪は見当たらなかったから、もし関係があったとしても自由恋愛・・・か・・・。

でも、仮にそうだとしても、『社長と秘書』というだけでなんだか卑猥な感じがするのはなぜだろう?

きっとこんな話をしたら、西園寺様にまたおこちゃま扱いされてしまいそうだが・・・。

そんな事をぼんやり考えている内に時間が過ぎたみたいだった。
コンコンと扉がノックされ、鈴本が開いたドアの向こうから時弥が現れた。

うん、予想通り。

黒のシャツに少し薄めの黒色タイを締め、やや光沢のあるスーツに身を包んでいる。ヘアはミディアムロングで、少し茶色に染めている。それをかき上げるようにオールバックにしており、本人は多分、野性味を演出しているつもりなのだろうと思わせる。

シューズは先がこれでもかと尖ったイタリア製を思わせるものだし、手元にキラリと見えるのは大振りな金のロレックス。

成金趣味のボンボンを完全に地で行っている。ここまで主張しなくてもいいのに、と若干気の毒ささえ覚えるレベルだった。
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