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天狐あやかし秘譚
第109章 青天霹靂(せいてんへきれき)
「それは幸いでしたね。
 ・・・それで、怪我をなさってるところ本当に申し訳ないのですが、ちょっと聞きにくいことを聞かなければなりません。
 こう・・・襲ってきそうな人に心当たりとかって・・・」
西園寺様がそう聞くと、朔弥は少し目を伏せた。
その表情は考え込んでいるようでもあり、思い当たっているけれども言い淀んでいるようにも見えた。

「正直、私が恨みを全く買ってないといえば嘘になります。
 しかし、銃で狙ってくるような人間となると・・・すいません。心当たりはないです」

まあ、社長候補だ。
恨みのひとつやふたつ買ってても不思議ではないだろう。
不倫をされている奥さんだって、もしそれを知っていたら恨みに思うかもしれないのだし。

「わかりました。お辛いところお騒がせして申し訳ありませんでした。
 後日、またなにか聞きたいことが出るかもしれません。
 その時はご協力いただけると幸いです」

意外にもあっさりと朔弥の聴取は終わる。
廊下に出ると、朔弥の病室の扉の両サイドに立つ制服警官が目に入った。要人警護ということなのかもしれない。そして、ここで石川は自身も捜査の方に回るということで別れることになった。

「ええと、色麻さん。念のためなんですが、病室に簡易結界をお願いできますか?」
「え、あ、はい。・・・西園寺様はどうなさるんですか?」
「うん、僕はちょっと調べ物をしてこようかと・・・」

少し離れたところで、声を潜めてそんな話をしていると、朔弥の病室の方がなにやら騒がしくなる。どうやら誰かが尋ねてきたみたいだった。

「社長に会わせててください!」

あれ?この声は・・・?

聞き覚えのある声だった。行ってみると、警護の警察官の前に、吾嬬千鶴が来ていた。警察署で取り調べ中とのことだったが、どうやらそれが終わって駆けつけてきたらしい。

警護の警察官としては、警察手帳を持っている石川や私たちはともかくとして、たとえ愛人だったとしても吾嬬を病室に入れるわけにはいかない、ということで、押し問答になっている様子だった。
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