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天狐あやかし秘譚
第109章 青天霹靂(せいてんへきれき)
☆☆☆
確かに朔弥は思ったよりも顔色が良く元気だった。左肩に巻かれた包帯は痛々しかったが、それ以外にはこれといって異常はないようだ。
そして、さすがに社長候補の一人である。差額ベッド代をうんと弾んだのだろう。一般病棟とは思えないほどの小綺麗な個室に彼は寝かされていた。ソファセットまであるそこはとても『病室』とは思えなかった。もちろん、私、西園寺様、石川刑事が入ってもなお余裕があるほどの十分な広さがある。
「大武朔弥さん・・・この度は災難でしたね」
西園寺様が声をかける。その目の配り方からして、どうやらざっと朔弥を霊視しているらしいことが私には分かった。
ああ、そうか、彼を襲ったのが鬼かもしれないと思っているのか・・・
もしそうだとすると、鬼の爪痕・・・つまり、生贄の印が残っている可能性があるのだ。
古来より、鬼はターゲットと決めたものに普通の人には見えない『印』をつけると言われている。これは『鬼の印』とか『鬼の爪痕』等と言われており、人を操る効果があるのだ。多くの鬼は、この印の力を使って、再び狙った獲物を誘い出して喰らおうとするのだ。
なので、鬼に襲われた人にその印がないかどうかをチェックするのは最初にするべきことなのである。
「ああ、刑事さん。」
朔弥が答えた頃には、霊視は終わったらしい。その瞳に込められた呪力がすうっと引いていくのが見て取れた。あの様子だと、どうやら『印』はなかったようだ。
「朔弥さん、襲ってきた人物の顔は見ましたか?」
「いえ、お恥ずかしながら・・・。車を降りてドアをロックしようとした時、後ろから突然撃たれたみたいでして・・・。肩にものすごい衝撃を感じて倒れて、それっきり意識を失ってしまいました。そして、どうやら近くにいた女性が私が撃たれたのに気づいて悲鳴を上げてくれたらしいんです。犯人はその悲鳴に驚いて逃走したと刑事さんに聞きました。もしそれがなかったら、私は昏倒したときにとどめを刺されていたでしょうね」
この『女性の悲鳴で』というくだりは、真実ではない。実際は、朔弥を尾行していた警察官が声を上げたことで犯人が逃走したのである。この点については、まだ警察は朔弥に本当のことを告げていないようだった。
確かに朔弥は思ったよりも顔色が良く元気だった。左肩に巻かれた包帯は痛々しかったが、それ以外にはこれといって異常はないようだ。
そして、さすがに社長候補の一人である。差額ベッド代をうんと弾んだのだろう。一般病棟とは思えないほどの小綺麗な個室に彼は寝かされていた。ソファセットまであるそこはとても『病室』とは思えなかった。もちろん、私、西園寺様、石川刑事が入ってもなお余裕があるほどの十分な広さがある。
「大武朔弥さん・・・この度は災難でしたね」
西園寺様が声をかける。その目の配り方からして、どうやらざっと朔弥を霊視しているらしいことが私には分かった。
ああ、そうか、彼を襲ったのが鬼かもしれないと思っているのか・・・
もしそうだとすると、鬼の爪痕・・・つまり、生贄の印が残っている可能性があるのだ。
古来より、鬼はターゲットと決めたものに普通の人には見えない『印』をつけると言われている。これは『鬼の印』とか『鬼の爪痕』等と言われており、人を操る効果があるのだ。多くの鬼は、この印の力を使って、再び狙った獲物を誘い出して喰らおうとするのだ。
なので、鬼に襲われた人にその印がないかどうかをチェックするのは最初にするべきことなのである。
「ああ、刑事さん。」
朔弥が答えた頃には、霊視は終わったらしい。その瞳に込められた呪力がすうっと引いていくのが見て取れた。あの様子だと、どうやら『印』はなかったようだ。
「朔弥さん、襲ってきた人物の顔は見ましたか?」
「いえ、お恥ずかしながら・・・。車を降りてドアをロックしようとした時、後ろから突然撃たれたみたいでして・・・。肩にものすごい衝撃を感じて倒れて、それっきり意識を失ってしまいました。そして、どうやら近くにいた女性が私が撃たれたのに気づいて悲鳴を上げてくれたらしいんです。犯人はその悲鳴に驚いて逃走したと刑事さんに聞きました。もしそれがなかったら、私は昏倒したときにとどめを刺されていたでしょうね」
この『女性の悲鳴で』というくだりは、真実ではない。実際は、朔弥を尾行していた警察官が声を上げたことで犯人が逃走したのである。この点については、まだ警察は朔弥に本当のことを告げていないようだった。

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