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天狐あやかし秘譚
第108章 匿影蔵形(とくえいぞうけい)
「えっと・・・それで私は何を答えればいいのかしら?」
ソーサーを持ち上げ、紅茶を飲む。その目は余裕を見せながらも、警戒は解いていない・・・そんな色を湛えていた。

「いえ、簡単な事を2〜3お答えいただければ結構です。
 一昨日の夜についてお伺いしたいのです。
 午後6時すぎから10時頃まで、どちらにいたか教えてください。」
「なにか私は疑われているのかしら?」
「いえ・・・皆さんに伺ってることなんです」
「さあ?自室で仕事をしていただけよ」
「それを証言できる方は?」
「いないわ」
「えっと・・・他の御兄弟は秘書をおつけになってるみたいですが、
 和羽さんは・・・?」
「私は秘書なんていらないから。邪魔なだけだし」
「じゃあ、ずっとお一人だった?」
「何度か、引間とは言葉をかわしたけれども、全部電話越し」
「外にはいらっしゃってない?」
「どうだったかしら?・・・あら、でも、そんなのはセキュリティを調べればわかるんじゃなくって?」
和羽はじっと西園寺を見つめていた。だけど、その目の色からは、この発言の趣旨を読み取ることはできなかった。

仕方がないので、事実を話すことにした。
「ええ、あなたがこの敷地から出たという記録は残っていませんでした」
「・・・あら、そうだったのね。
 たまに外に出ることもあるから自信なかったんだけど。だったらその日は出なかった・・・ということかしら」

なにかちょっと引っかかる言い方だった。
秘書を付けないほどスケジュール管理に自信がありそうなのに、外出したかどうかを覚えてないというのは・・・?
そんな疑問が西園寺の頭をよぎる。

ちょっと揺さぶってみるか・・・。

「ところで、先代がお亡くなりになった後、大武家では大変な騒動のようですね」
「騒動・・・?ああ、売上競争の件ね。・・・騒動ってほどじゃないわ。
 ずっと私達、兄弟は父から言われて育っていたから。父が倒れてからこっち、皆覚悟していたはずよ」
「しかし、遺産が相続できないだけではなく、家を追放とは・・・大分厳しい父親だったのですね」
「これが大武家のやり方・・・ですからね。祖父の時代にもあったことです。
 父も他の5人の兄弟を出し抜いて今の地位を築いた。それを私達にもしているだけ・・・」
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